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【ばけばけ】蛇と蛙の阿佐ヶ谷姉妹の掛け合いにクスッ。この脱力感こそ令和の朝ドラか

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田幸和歌子

「すみません、うちの落ち武者が…」

第2週は、その「ちょっとした笑い」の空気がさらに加速したような印象だ。なんとか暮らしを立て直したい。前週の予告で「貧乏脱出お見合い大作戦」と語られていたが、借金を返すための松野家の〝秘策〟が、トキの婿を働き手として向かい入れようというものだった。とはいえ、その条件面で肝心のトキの希望が「怪談好き」となると、河童だの小豆洗いだの司之助が妖怪の名前を挙げて混ぜ返す。さらにいえば勘右衛門の希望条件は「士族」。結果、「士族の小豆洗い」を探すという、ツッコミ待ちでしかない条件に着地する。

さて、そうなりながらもどうにか訪れたお見合い本番。今のところ本作の「ちょっとした笑い」の中でもよりコメディ要素の強い司之助と勘右衛門は、明治の時代に入ってなおかつ転落してなお武士の誇りは捨てきれられないということか、時代遅れ(?)の上下袴姿でトキの見合い相手を迎える。見合い相手に二人の髷姿をほめられ上機嫌なところもまた「ちょっとした笑い」を誘う。

松野家の掛け合いが生み出すテンポのいい笑いは、小日向文世、岡部たかし、池脇千鶴のベテランたちの演技力による部分が大きい。そこにさらに親戚であり早々に〝ざんぎり頭〟になり新時代に適応できている傳(堤真一)がからむことで、より喜劇風味が強まる。この掛け合いの会話劇だけでも見どころ十分だ。そもそもこの見合いも、傳たち雨清水家の口利きによる部分が大きいものだった。

見合い本番での相手の反応はよく、松野家は大喜びしたものの、結果はNO。その理由は、司之助と勘右衛門がレゾンデートルとしている「武士」の部分であるところがなんとも皮肉、というよりは「それはそうだろう」。そう思えるところもまた、本作のコメディ部分がうまく機能しているからといっていいだろうか。

二度目の見合いで意を決して髷を落とした司之助の姿が、月代を剃ったままなだけに、まさに落武者状態。そんなビジュアルでも笑いを入れ込んでくる。それなのに今度の相手が武士の心を忘れない髷姿の男性というところもまた、笑いを誘う。傳の「すみません、うちの落ち武者が」というセリフがそこに追い討ちをかける。つらい借金生活を笑いとともに気分を軽くしてくれるような演出だ。

【ばけばけ】蛇と蛙の阿佐ヶ谷姉妹の掛け合いにクスッ。この脱力感こそ令和の朝ドラか(画像4)

「ばけばけ」第9回より(C)NHK

しかし、二度目の見合い相手の銀二郎(寛一郎)がまさかの怪談好き、トキと話がはずみ、まさかのとんとん拍子で縁談が進む。銀二郎はこれまでこだわってきた髷を落とし、〝落ち武者〟の仲間入りをするというさらなるまさかで結婚への道を進んでいく。

そんなわけでヒロインのトキの婿取りが順調に進んでいってしまうわけだが、のちの夫となるヘブンは当然まだトキの前に登場していない。ほぼすべての視聴者は「結果」を知っている。そこにたどりつくまでどうなっていくのか。銀二郎との結婚はこのまま何事もなく進んでいくのか。気になるところもまた、軽妙な「ちょっとした笑い」で次週も突き進んでいくのだろう。

【ばけばけ】蛇と蛙の阿佐ヶ谷姉妹の掛け合いにクスッ。この脱力感こそ令和の朝ドラか(画像5)

「ばけばけ」第10回より(C)NHK

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