医師が語る【運動負債】の恐ろしい影響。「風邪で寝込んだだけで認知機能が落ちる」改善のカギは【ウォーキング】!?
“歩く”ことが密接に関係する脳の部位とは
なぜ歩くだけで心や体の不調が改善するのだろう。そのカギは「運動脳」にあった
「私たちの脳は、場所によって役割が異なり、私はこの機能ごとのエリアを『脳番地』と呼んでいます。脳番地は主に運動系や感情系など8つの系統に分かれているのですが、心や体に表れるさまざまな不調はこれらの脳番地の機能が低下しているサインなんです。そしてこの脳番地の中で、脳が成長する際の起点となるのが、体を動かすときに指示を出す『運動脳(運動系脳番地)』です。運動脳は他の脳番地と密接につながっているため、歩いて運動脳を刺激すると、連動して脳全体が活性化。ネットワークも強化され、さまざまな不調が改善するというわけです」
ウォーキングが脳に与える影響は、脳のMRI画像を見れば明らかだ。
「歩いていない時期の脳を見ると、神経細胞の枝ぶりが細く、劣化しています。かたやよく歩いている時期の脳は枝ぶりがよく、ネットワークが強化されていることがわかります。歩くか歩かないかで、脳の健康状態にこれほど大きな差が生じるのです」
8つの脳番地の位置
脳番地は主に8つの系統に整理することができ、脳番地同士がネットワークを構築。それぞれに得意な領域や専門領域がある。
※「脳番地」(商標登録5056139/第5264859)は「脳の学校」の登録商標です。
気づかぬうちに溜まる怖い「運動負債」
運動不足がよくないことは誰もが知っている。だが、その影響は私たちが思う以上に深刻だ。
「私が問題視しているのは、単なる運動不足ではなく、それが借金のように蓄積していく『運動負債』です。つい最近まで元気だった方が、風邪で数日寝込んだだけで一気に認知機能が落ちてしまうことがありますが、これはまさに運動負債によるもの。歩かない生活は、脳と体に少しずつダメージを与え、さまざまな不調や病気のリスクを高めることにつながります」
ウォーキングを行うことは、運動負債を避けるだけでなく、逆に「運動貯金」を増やすためにも有効だという。
「運動負債と運動貯金は、借金と貯金のような関係にあります。日々の生活で必要とされる基準以上の運動を行うことで、脳と体の健康の『貯え』がつくられます。この貯えは、心身のコンディションを良好に保ち、将来の健康への投資となるもの。病気や多忙で一時的に運動できない日があっても、その貯えで補うことができます。ですが、貯えが尽きてしまえば、一人で生活することもままならなくなる怖れが。介護施設に入ることになれば、お金もかかりますよね。人生100年時代を楽しむためにも、運動貯金をしっかり貯めていきましょう」
【後編に続く】
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撮影/柴田和宣(主婦の友社)
※この記事は「ゆうゆう」2025年11月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
