80年代ドラマの「不良役」で一世風靡。もう役者なんて嫌だ!その時にかけられたまさかの言葉【松村雄基さんのターニングポイント#1】
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恩田貴子
燃やし続けた反骨心が“ワル役”を引き寄せた
松村さんが得たよき縁のひとつに、大映テレビのプロデューサー・春日千春さんと、彼の手がけた作品との出会いがある。
「春日さんがプロデューサーを務める作品に最初に出演したのは、1984年に放映された『少女が大人になる時 その細き道』というドラマ。僕の芝居ができていなかったのは事実なんですが、撮影初日からこてんぱんに怒られたんです。その後はもう何をしても怒られるような状態で、僕からしたらみんなが敵に見えてしまったんですよね。撮影が終わるまでの2カ月間、『おはようございます』『おつかれさまでした』以外、誰とも話をしませんでした。そのせいで、この作品で共演した伊藤かずえさんからは、『のりちゃん(松村さんの本名)は暗い人だと思ってた』と、いまだに言われるんですよ(笑)」
「もう役者なんか嫌だとさえ思っていた」と、松村さんは当時を振り返る。しかし心の中では、もう一つの感情が燃え上がっていた。「このままでは終われない」という、激しい反骨心だ。
「ただ悔しいだけじゃなくて、どこかで『負けたまま終わりたくない』『あの監督によくやったと言わせるんだ』という気持ちがありました。そう思わせてくれる人だったんです。僕の至らないところをストレートに伝えてくださったし、いいものはいいと言ってくださる監督でしたから」
そんななか、転機が訪れた。新宿の居酒屋で行われた、とあるシーンの撮影。演劇青年役の松村さんは、カメラの前で一人、1ページ半にわたる長台詞をとうとうと語った。
「無我夢中で演じたそのシーンを、監督とプロデューサーの春日さんが見て、初めてほめてくれたんです。春日さんは、『あの子は若い頃の僕に似ている』ともおっしゃったそう。これは僕の推察ですが、春日さんの中にも、何か社会への反抗心や、アウトロー的な部分があったんじゃないかな。それが僕の中の反骨心と共鳴したのかもしれませんね」
以降、松村さんは春日さんが手がけるドラマに欠かせない役者となる。「不良少女とよばれて」「スクール☆ウォーズ」「乳姉妹」––––。今も多くの人が松村さんのイメージとして挙げる“ワル役”は、ここから始まった。
「演劇青年役がなぜ暴走族のリーダー役につながったのか、さっぱりわかりませんが(笑)、監督に怒られまくった日々や、春日さんとの出会いが後の不良シリーズにつながった。今の僕があるのは、あの日々のおかげです」
もし、あの現場でやさしくされていたら。もし、悔しさをバネに「見返したい」と思っていなかったら。松村さんが演じた魅力的な不良役の数々は、生まれていなかったかもしれない。
「『役者なんて嫌だ』と思ったほどのマイナスの環境が、いつの間にか僕の俳優人生にとって大きなプラスになっていたんですよね。今思えば、恵まれていたんです。陰でコソコソ言う人はいても、面と向かって怒ってくれる人はなかなかいませんから。人との出会いと、あの『なにくそ!』という反骨精神があったからこそ、僕は役者を続けてこられたんだと思います」
【Information】『わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-』
香川に生まれ大阪で育った笠置シヅ子(キムラ緑子)は、歌劇団に憧れ大阪松竹座へと押しかける。偶然居合わせた音楽家・服部良一(松村雄基)に才能を見出され、大阪松竹少女歌劇団(のちのOSK)へ入団し、やがてトップスターとなる。さらに本格的なショーを目指して上京した彼女は、戦争の影響や花森興業の御曹司・花森英介(林翔太)との運命的な恋を経て、戦後日本を代表する人気歌手へと成長していく。数々の出会いや試練を乗り越え、どんなときも明るく歌い続けたシヅ子。涙と笑顔に満ちたその人生を、「東京ブギウギ」「ラッパと娘」「ジャングル・ブギー」など珠玉の名曲とともに描く感動の舞台。
作/小野田勇 補綴・演出/齋藤雅文
出演/キムラ緑子、林翔太、惣田紗莉渚、賀集利樹、曽我廼家寛太郎、一色采子、桜花昇ぼる、松村雄基 他
【東京公演】2026年1月2日~20日 三越劇場
全席指定1万円(税込)
チケットホン松竹☎︎0570-000-489もしくは03-6745-0888(10:00〜17:00)
チケットWeb松竹(24時間受付)
【京都公演】2026年1月24日~2月1日 南座
1等席1万2500円、2等席7000円、3等席4000円、特別席1万3500円(いずれも税込)
チケットホン松竹☎︎0570-000-489もしくは06-6530-0333(10:00〜17:00)
チケットWeb松竹(24時間受付)
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