鳥羽周作「55歳で現場を降りる」理由。糖尿病はチャンス!病気と共に生きるその未来像は?【鳥羽周作さんのターニングポイント#4】
糖尿病を「チャンス」と捉え、主体的に学び続ける鳥羽周作さん。最終回となる第4回では、その行動力と前向きさはどこから生まれているのか、そしてこの先どんな未来を描いているのかを聞きました。社長として、料理人として、一人の人間として——“思考で治す糖尿病”の先に見ている景色とは。
社長になって身についた「因数分解」と「名付け」のクセ
――問題に対して主体的に勉強して、解決していく。その姿勢はいつ頃から培われたのでしょうか?
鳥羽シェフ:やっぱり、この会社の社長になってからですね。
社長になると、うまくいくこともあるし、うまくいかないこともある。そのときに「なぜうまくいかなかったのか?」という疑問にぶつかるようになりました。そこで、自分なりにどんどんトライアンドエラーをしていくうちに、「こうなんだ」と理解できたことを、ちゃんと言語化して名前をつけるクセがついたんです。
僕は物事を因数分解するクセがあるんですけど、どんな物事にも必ず構成要素がある。その中でも大事な要素は何なのかを見極めて、さらにその要素を細かく分解していく。そして「どれを際立たせるのがいいか」を考える。そんなふうに、物事の本質を見ていくことを大事にしています。
糖尿病で言えば、運動・食事・休息など、乗り越えるために大事な要素がたくさんありますよね。
それをどう編集していけばうまく戦えるのかを考えたとき、「積極的バランスだな」と。
“食べちゃダメ”ではなく、“食べたら減らす”というやり方のほうが、精神的にも健全でストレスが少ない。
それが、僕なりの答えでした。
だから糖尿病に対する自分なりのメソッドも「頭で治す糖尿病」(第1回記事参照)とネーミングしているんですよね。
インスリン卒業は、あせらず「なだらかな坂道」で
――インスリンの投薬量が診断当初よりかなり減ったとうかがいましたが、いずれはインスリン注射も卒業できると思いますか?
鳥羽シェフ:やらなくてOKになる可能性はあると思っています。最終的に目指しているところは、自分の自然治癒力です。
インスリンが出る量が少ないと、糖を摂ったときに分解できないから血糖値が上がるわけですよね。
だから、自分のインスリンで処理できるようになれば、薬を打つ必要はなくなる。それが「元の状態に戻る」ということ。
そこを目指して、今の治療を続けています。ただし、それも“可能な範囲で”と思っています。
一気にやろうとすると反動が大きくなって、持続性が低くなってしまう。だからゆっくり滑らかな傾斜で元の状態に戻していくことで、安定させていく。それが大坂先生のやり方です。
もっと効き目の強い薬もあると思うんですが、そのぶん“はね返り”も大きくなる。少しずつ折り合いをつけながら、今はゆっくり治療しているという感じですね。
「誰が言うか」が大事。自分がハブになれたらいい
――いま大坂先生とやっている治療や考え方は、糖尿病治療としては“メジャー”なやり方なのでしょうか?
鳥羽シェフ:メジャーかどうか、というよりは、「ちゃんと勉強して学会に出て、論文も発表している先生」が言っている、当たり前のことなんだと思います。
これまで、そうしたことがクローズドな世界にとどまっていただけで、それをオープンに発信していくというスタンスなんですよね。だから、“知られていなかった当たり前”をきちんと説明している感覚です。
――そうすると、鳥羽さんがその「ハブ」になれる可能性もありますね。
鳥羽シェフ:そうですね。結局、物事が広がっていくときって、「何を伝えるか」も大事だけど、「誰が言うか」がすごく大事だと思うんです。特に今の時代は。
そういう意味では、自分がやるべきタイミングだったのかなと感じています。
そこに大坂先生が結びついて、エビデンスのあるものをちゃんと発信していくことで、多くの人に勇気を与えられる——と言ったら大げさかもしれないけれど、何かしら意味のあることにはなるはずだと。
「糖尿病のすごくいい話が聞けるラジオ」なんて、今はほとんどないじゃないですか。
だから、そういう番組をやるのも面白いと思うし、料理とも結びつけられたら最高ですよね。
今はライバルがいないからこそ、「やる価値があるな」と感じています。
