【石黒賢さん】キャリア40年を超え、あえてシェイクスピア作品に挑む理由とは?
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恩田貴子
5月9日に開幕する舞台『ハムレット』に出演する石黒賢さん。俳優として長くキャリアを重さねるなか、初出演となる“シェイクスピア作品”に挑む思いとは?
今、やらなければ俳優としてダメになってしまう
5月9日に幕を開ける舞台『ハムレット』の製作発表記者会見。主人公ハムレットの叔父・クローディアスを演じる石黒賢さんは、意気込みを問われると、少し息を整えてからこう言った。
「死ぬ気でがんばります」
キャリア40年を超える俳優の口から出た、まっすぐで泥臭い言葉。会場がわずかにざわついたのを、本人も感じていたのだろう。会見後、その真意を尋ねると、石黒さんは照れたように笑いながら、心の内を明かしてくれた。
「シェイクスピア作品は難しいし、目指す頂が高ければ高いほど挑戦のしがいがある。その高い頂を目指して、過去の自分を超えていこうと向かっていくわけですから、死ぬ気でやらずにどうするんだ、と思うんです」
長く映像の世界で活躍してきた彼が、今あえて過酷な挑戦を選ぶのはなぜか。水を向けると、少しだけ苦笑いを浮かべる。
「若いころは本当に舞台が怖くて。映像でも舞台でも体調管理は大事です。風邪もひけないし、ケガもできないですから」
そんな石黒さんを舞台へと引き戻したのは、長年身を置いてきたドラマの現場で感じた、ある危機感だった。
「俳優って、台本に水を飲むシーンがあったら、『この人はペットボトルからそのまま飲む? コップに移す?』って考えるんです。その人がどういう人なのか、それだけでたくさんのことが表現できるので。でも最近、そういうオプションをいっぱい携えて現場に行っても、時間などの制約で、監督とディスカッションする場がもてないことが増えてきて。年齢のせいか、『石黒さん、こう演じてください』と指示されることもほとんどなくなった。ある意味、お任せされることが増えたんです」
効率化が進むドラマの現場は、規制もまた多い。「製作陣も、もどかしい思いをしているはず」と慮りながらも、その“お任せ”の空気の中で、石黒さんは自分自身に対する不安を募らせていく。
「自分のことは、自分が一番わからない。だから演じていて、『これでいいのかな』と非常に不安になるわけです。一方で舞台は、稽古時間も長いし、ディスカッションしながら芝居を積み重ねていく。そういう場所でガッツリやっていかないと、俳優として俺はダメになってしまうんじゃないか。年を重ねるほどに、そういった危機感が強くなっていきました」
こうしてあえて厳しい環境へ飛び込むことを決めた石黒さんは、2025年に朗読劇を含む3本の舞台に出演。そして2026年、『ハムレット』へ挑む。
