60代ひとり暮らし。黒部移住で2カ月半過ごして変わった、私の「あたりまえ」
ここへ来なければ知らなかった自分に、次々と出会っています
黒部での暮らしは自然豊かで最高ですが、買い物に関しては日常の食品や消耗品は買えても、大阪のデパートで売っているような「ときめく買い物」をする場所はありません。人生60年、服や靴、小物などの買い物はデパート派でした。丁寧な接客や上質なアパレルが好きだったのです。でも、のどかな黒部で暮らしてみると、そのスタイルは必要ありませんでした。一度も出番がなかったからです。黒部の美しい自然には、アウトドアブランドが似合いそう。夏はTシャツにパンツスタイルで過ごすことが多く、ネットで購入するようになりました。
私がオシャレして出かける場所は、お洒落なカフェやレストラン、ホテルのアフタヌーンティーでした。でも、いまは首にタオルを巻いて畑仕事に勤(いそ)しみ、ひとりでは食べきれないほどの野菜を収穫して料理することが楽しみになりました。おかげで、これまで作ったことのないようなレシピにも挑戦するようになりました。
うちの畑では、夏野菜の代表格「茄子」が立派に育ちました。いくら好きでも毎日だとさすがに飽きてしまいます。だから、飽きないように料理を工夫しました。麻婆茄子。はさみ焼。味噌炒め。ピリ辛和え。ステーキ。スタミナ焼き。合わせる食材や調味料を工夫して主役級の一品作りに励みました。そのおかげで、フードロスはゼロ。そして、外食が減って食費も大幅に削減できました。
秋になれば、大根やブロッコリー、葉物野菜を植える予定です。それを、自分だけが食べるんじゃなくて、欲しい人に箱詰めにして届けることを楽しみにしています。
黒部に移住して、まだ2カ月半。
それなのに、ずっと「あたりまえ」だと思っていたことが、いくつも変わりました。
人は「価値観を変えよう」と思っても、そう簡単には変われません。でも、場所を移動すると、それまでの「あたりまえ」が通用しなくなる。新しい土地のルールに戸惑ったり、知らなかった楽しみを見つけたり、「これまで必要だと思っていたけれど、なくても平気だった」と気づいたりする。
物書きをしている私は、新しい場所へ行くこともひとつの「インプット」だと思っています。そこで見たもの、感じたことを、自分なりに暮らしや文章に「アウトプット」していく。その繰り返しが、これまでとは違う人生を創っていくんじゃないかと思います。
移住のような大げさなことでなくても、知らない土地へ旅してみる、いつもと違う町へ出かけてみる。知らない店に入ってみる。普段なら選ばないことをやってみる。いつもとは違う人と話してみる。
ほんの少し自分をいつもの場所から動かすだけでも、それまで見えていなかったものが見えることがあります。
63歳で大阪から黒部へ移住した私も、ここへ来なければ知らなかった自分に、いま次々と出会っています。
人は考え方を変えてから動くのではなく、動いたから考え方が変わることもある。
だから私はこれからも、ときどき自分を「いつもの場所」から動かしてみようと思っています。
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