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田幸和歌子の「今日も朝ドラ!」

幼馴染3人組の葛藤がフィーチャーされた【舞いあがれ!】いよいよ航空学校編へ!

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田幸和歌子

舞ちゃんはどうなる⁉︎ わくわくしながら朝ドラを見るのが1日の始まりの習慣になっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

東大阪で生まれたヒロイン岩倉舞(福原)が、長崎・五島列島に住む祖母や様々な人との絆を育みながら、パイロットとして空を飛ぶ夢に向かっていくNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の7週目。

今週は舞、久留美(山下美月)、貴司(赤楚衛二)の幼馴染3人組の悩みや葛藤がフィーチャーされる。
朝ドラには『ひよっこ』(2017年度上半期)や『スカーレット』(2019年度下半期)など、男女ミックスの魅力的な幼馴染3人組が登場する作品が他にもあるが、中でも本作の3人組は最も「デリカシーのかたまり」の印象がある。
そんな3人の性質や距離感が、今週は際立っていた。

舞は航空学校に行きたいと伝えるが、親に反対され、久留美は仕事を辞めた父・佳晴(松尾諭)と口論になり、離別した母に会いに行くか悩み、貴司は会社を辞めて失踪。そんな中、貴司が五島に来ていることがわかり、貴司を探しに舞と久留美も五島を訪れる。

3人の対比において、仕事が長続きしない父・佳晴(松尾愉)を支えつつ、勉強を頑張り、看護学校の学費免除を得ている久留美や、仕事でノルマを達成できず、苦しむ貴司に比べ、「旅客機のパイロットになる」という新たな夢を見つけた舞は一見、順風満帆だ。

航空学校に行きたい、試験に合格したら大学を中退すると言う舞に、めぐみ(永作博美)は猛反対。実家のねじ工場を継ぐ浩太(高橋克典)を支えるため、自身が大学を中退しているめぐみならではの心配もあるが、そうでなくとも多くの視聴者は「大学卒業後でも良いだろう」と思ったはず。しかし、舞が急ぐのには理由がある。

『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 舞いあがれ! Part1』(NHK出版)によると、パイロットになるには、一般の大学などを卒業後に航空会社の自社養成パイロットとして就職し、社内訓練で資格を得るルートと、航空学校などで必要な学科や飛行技能などを学び、必要な資格を取得してから航空会社に就職するルートの2つがあり、舞が挑むのは後者のほう。そして、航空学校は超難関なうえ、「入学時の年齢20歳以上、25歳以下」が受験資格であるため、リミットがあるのだ。

おまけに、幼い頃に父の工場が倒産寸前だった状況を知る舞が、回り道をすることで余計なお金を親に使わせられないと思うのも自然だろう。

一方、貴司が語ったのは、営業成績最下位で先輩に責められ続ける痛みと、「普通の人」にできることが自分にはできないという悩み。そんな思いを唯一吐露できたのが、古本屋「デラシネ」の店主(又吉直樹)だったが、デラシネ閉店で吐き出せる場所を失い、会社に行けなくなり、舞が小学生の頃に送った絵葉書の五島の風景を思い出したという。

しかし、祥子ばんば(高畑淳子)の「周りに合わせんでよか。自分のこた知っちょる人間が一番強かけん、変わりもんや変わりもんで堂々と生きたらよか」といった言葉に励まされ、五島の海や空の大きさから、自分の世界の狭さを実感。自分にとって生きやすい場所を探しながら生きることを決め、それを両親に告げることができた。

そして、そんな貴司の決意に背中を押され、舞は両親にパイロットへの夢を改めて伝え、認めてもらえることに。

一方、久留美は離別した母(小牧芽美)と会うことを決め、母が家を出た当時の思いのすれ違いを確認する。母が久留美を連れて行こうとしたとき、久留美が父と残ると言ったのは、そうすれば母が出て行かないと思ったためだった。母から届くカードを保管し、母と同じ看護師の道を目指す久留美。

しかし、いくら自分が頑張っても父は変わらないこと、ずっとこのままなのではないかと不安になる思いを、初めて母を前に吐き出すことができた。

自分が家を出たことで、自分が本来担っていたはずの役割を娘に押し付けてしまっていた母。一方、自分が決めたこととはいえ、幼い決断から逃げるに逃げられず、弱音も吐かず頑張ってきた分、当時の母のしんどさが理解できる久留美。

期限つきの夢に向かってまっすぐ進む舞と、答えが見つかるか、そもそも答えがあるのかもわからない道を進もうとする貴司、そしてどこまで行っても出口の見えない暗闇が続く久留美。

互いの家庭環境や資質の違いを理解しつつ、マウントをとるでもなければ、卑下したり嫉妬したりするわけでも、自身の価値観やアドバイスを押し付けるわけでもなく、相手のパーソナルスペースは尊重しながら、見守り、励ます関係性。非常に現代の若者らしい、大人で、繊細で、優しいつながりの3人ではないだろうか。

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