三浦朱門・曽野綾子夫妻の長男に嫁いだ著者が描く、強烈な個性をもつ家族の物語とは?
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ゆうゆう編集部
三浦朱門・曽野綾子夫妻の一人息子・太郎氏に嫁いだ、エッセイストの三浦暁子さん。最新刊『太郎の嫁の物語』では、「嫁」の目から見た一家の姿が綴られています。
義理の家族との50年を嫁の目で捉えた物語
作家の三浦朱門・曽野綾子夫妻の長男・三浦太郎氏の妻で、自身もエッセイストとして知られる三浦暁子さん。近年はノンフィクション作家としても活躍する。
本作は、婚家・三浦家の人々との50年にわたる思い出を綴った一冊だ。今、家族について書こうと思った理由を暁子さんはこう話す。
「夫の太郎が文化人類学者ということもあり、以前から自宅に『サンパウロへのサウダージ』という本がありました。私はこの本が大好きで」
この本は、人類学者のクロード・レヴィ=ストロースが、1935年から滞在したブラジル、サンパウロの街の日常をスナップした写真集で、撮影から半世紀以上たった96年に刊行された。
「ポルトガル語の『サウダージ』の意味は、過ぎ去ったものへの遥かな思い。単純に『昔が懐かしい』ということではなく、日本語の『あはれ』に近い、翻訳不能の言葉と書かれています」
暁子さん夫妻は長く神戸で暮らしているが、最近、東京の三浦家を訪れるたびに、今は亡き、明治生まれの義理の祖父母や大正生まれの義父のことが思い出されて仕方がないのだという。
「懐かしさとともに昔の記憶が一気に押し寄せてくるんです。『ああ、これがサウダージなのか』と私なりの理解ができました」
大学在学中に太郎氏と結婚した暁子さんは、実家とはあまりに違うタイプの家族に、何度も息をのみ、仰天。本書にはそのエピソードが満載されている。
「三浦家の人たちからはたくさんのことを教わりました。なかでも、祖父母や義父とのことはかけがえのない思い出です。彼らはもういないけれど、でも確かにここにいた。その記憶を息子や孫に伝えたいという思いがあります。そして彼らがまた次の世代に伝えてくれれば、過去が今につながり家族の物語が続いていく。そうなっていったらいいだろうなぁと思います」
本書には、夫の太郎氏、義父の三浦朱門氏、義母の曽野綾子氏をはじめ、朱門氏の父でイタリア文学者の三浦逸雄氏、その妻で元新劇女優の小イシ氏についても、数々のエピソードが登場する。とにかく誰も彼もが強烈な個性の持ち主で、暁子さんは「大丈夫なんだろうか、私……」といつも思っていた。
「家族として愛してもらうにはどうしたらいいかも考えました。そして、そうか、こっちから好きになればいいんだと。計算といったらそうかもしれないけれど……そんな私を受け止めてくれた人たちでした」