【遺産トラブル実例】親を介護した分は無視され、さらに使い込みの疑いまでかけられて…
CASE② 親の介護をしても遺産分割には無関係!?
【実例】
介護の分は無視され、使い込みを疑われて
遠くに住む兄も姉も、口を出すだけで何もせず、母の介護は私ひとりで頑張ったのに、「遺産は3等分しよう」と言われました。さらに、私が預かっていた母の通帳を見て、私が自分のためにも使ったのでは、と疑うようなことまで言われ大げんかに。介護で頑張った分、多くもらうのは間違ってますか?
介護の分を多くもらうには遺言書を書いてもらう必要が
きょうだい間で介護負担の差がある場合も、トラブルが起きやすいですね。まず、介護を担当した人に対して感謝や配慮のないことが多い。感謝の言葉どころか、親と同居して世話をしていた場合、「家賃がかからなくて得している」とか、「生活費も出してもらっていたんじゃないの?」と言われることも。そんなことを言われれば余計、「特別の寄与」を主張したくなりますね。
介護をひとりで担っていたのは、本当に大変だったと思います。ですが寄与分には明確な基準がなく、残念ながら親の介護をした人の「特別の寄与」は認められないことも多いのです。認められたとしても、とても少ない金額です。
やはりこの場合も、トラブルを防ぐためには、親に「世話をしてくれた○○に、これだけの財産を相続させる」と寄与分を認める遺言書を書いてもらっておけばよかったですね。遺言書があれば、親の意思が優先されますから。
親の預金について疑われるのは心外ですが、事前に親の財産について兄、姉と情報を共有しておく必要がありました。介護については親が元気なうちに、どうしてほしいか親の意向を確認しておくことが大事。介護が始まったら、それに沿って、きょうだいで役割分担をします。親の通帳を預かることになったら、その時点でどのくらい預金があるか、きょうだいで確認を。その後も何にどれくらい使ったかを記録しておいて定期的に見せるようにしましょう。手間はかかりますが、トラブル防止のためです。
また離れて暮らしているきょうだいには介護の細かいことはわからず、親は元気で手間もかからない、と思う人もいるので、通院のつき添いや病状などについてもメモしておき、介護の状況も報告、共有を。
「特別の寄与」とは?
相続人の中に亡くなった人(被相続人)の事業を手助けしたり、介護や看護に努めたりして、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした人(特別寄与者)がいれば、その人は他の相続人より多く相続できる制度がある。プラスでもらえる財産を「寄与分」という。
ただし親と同居して介護に努めてきたとしても、通常の世話や介護では特別の寄与とは認められない。報酬をもらっていた場合も対象外。寄与分は相続人同士の話し合いで決める。どのくらい寄与したかについては客観的な証拠が必要。
※この記事は「ゆうゆう」2024年6月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
取材・文/田﨑佳子
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