【光る君へ】紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の過去の恋愛模様を、紫式部の父についに告白
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志賀佳織
第20回「望みの先に」は、とんでもない不祥事を起こした伊周・隆家の行く末と、それにともなう中宮の運命が見どころだ。いよいよこれから道長をめぐる物語が大きく動き出そうという予感のするエピソードが、そこここに散りばめられた回だった。
伊周と隆家が置いて帰った武者の中に二人死者が出たと聞き、一条天皇は激昂する。「伊周と隆家の参内まかりならず。当面謹慎させよ。中宮は、身内のものに一切会うべからず」。つらいのは間に立たされた中宮である。身内である兄弟の不始末が最愛の夫である一条天皇の逆鱗に触れてしまったのだ。
一方、まひろの父・為時は、念願叶って淡路守に任命されるが、まひろは越後に宋人が大勢来ていると聞いて以来、父のように漢籍に明るい宋の言葉も解する者は、淡路ではなく越後守にこそ相応しいのにと内心思ったりする。祝いに駆けつけてくれた藤原宣孝にもついそのことを漏らしてしまうと、「除目のあとでも任地が変わることはある」と聞かされて、まひろは月明かりの下、墨をすり始める。
後日、たくさんの申文の中に、「藤原朝臣為時」の名前で漢文が書かれているのを道長は見つける。その見覚えある筆跡に、道長は書き手がまひろであることを確信する。
苦学寒夜 紅涙露袖
除目春朝 蒼天在眼
学問に励んだ寒い夜は、血の涙が袖を濡らした。除目の翌朝、無念さに天を仰ぐ私の眼には、ただ青い空が映っているだけ。この漢文に感じ入った一条天皇は、道長の推挙もあり、すでに越前守に決まっていた源国盛(くにもり/森田甘路)に替えて、為時をその職に任じる。
道長からの立て続けの引き立てに、さすがにこれはと思った為時は、改めて道長との関係をまひろに尋ねる。「道長様は私がかつて恋い焦がれた殿御にございました。されどすべて遠い昔に終わったことにございます。越前は父上のお力を活かす最高の国。胸を張って赴かれませ。私もお供いたします」。うなずく為時の笑顔に、さわやかなまひろの笑顔がまたグッとくる。
その頃、体調不良が続く女院こと藤原詮子(あきこ/吉田羊)を思って屋敷を探索させた道長の妻・源倫子(ともこ/黒木華)は、屋敷のそこここに女院を呪詛する札などを見つける。悲鳴をあげる女院だったが、これが彼女の自作自演であることを倫子は見抜いていたのだった。なので、道長を前にこうきっぱりと宣言するのだ。「殿、このことは私におまかせていただけませんでしょうか。屋敷内で起きたことは私が責めを負うべきにございます。こたびのことも私が収めとうございます」
いやぁ、自作自演の女院様も恐ろしいが、これをわが手でしっかり火消ししようという倫子の賢夫人ぶりがもっと恐ろしい、と思うのは私だけであろうか。あの微笑みが怖い(笑)。というのも、結局、伊周も隆家も「呪詛した」という濡れ衣を着せられて、一方は太宰権帥(ごんのそち)に、もう一方は出雲権守(ごんのかみ)への遠流(おんる)が決まってしまうのである。そして中宮は実家に戻された。
二人の行く先を案じる道長に安倍晴明(はるあきら/ユースケ・サンタマリア)は断言する。「大事なのは、いよいよあなた様の世になるということにございます。あなた様には誰も敵いません」。やっぱり倫子が夫の出世のためにやったこと?と勘ぐってしまうじゃないの。倫子としても夫に「女」の影を見るだけに、必死なのであろうか。
沙汰が下ったというのに、命に従わない伊周、隆家を検非違使(けびいし)たちが捉えに来る。そのとき、逃げる伊周を追う検非違使の刀を抜いて自らの喉元につきつける中宮・定子。「あっ!」と誰もが固唾をのんだ次の瞬間、ばっさりと長い髪を切った。髪を下ろしてしまったのだ。
これだけの人間模様が各所で展開しながらも、どの人物にもきちんと前後のストーリーが感じられて視聴者をぐいぐい引っ張っていくところは、さすが大石静の手腕だ。女達の裏での動きからも目が離せない。来週も待ち遠しいぞ。
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