「ワンシーズン70日間スキーをする76歳」【鎌田實さん】が実践する「朝たんぱく質」習慣。そのメニューは?
長野県民を長寿へと導いた、諏訪中央病院名誉院長で、地域包括ケア研究所所長の鎌田實さん。元気な体と心を維持するために、鎌田さん自身も実践している「朝たんぱく質(朝たん)」習慣について教えていただきました。
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お話を伺ったのは
鎌田實さん 医師、作家
かまた・みのる●1948年東京都生まれ。
医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。
東京医科歯科大学医学部を卒業後、諏訪中央病院で地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。
1991年に日本チェルノブイリ連帯基金を創設、2004年にイラク支援を開始し、現地に赴き医療活動を行う。
読売国際協力賞など受賞多数。
「朝、たんぱく質を食べて体を動かす」 それが筋肉に変わっていくのです
「僕は今、76歳ですが、今年のスキーシーズンは70日間、75歳の奥さんは55日間、スキー場で滑りました」と生き生き話す鎌田實さん。長野を長寿県へと導いた鎌田さんが推奨し、ご自身でも実践する食事のルールが「朝たんぱく質(朝たん)」習慣だ。取り入れた理由は筋肉にある。
「50歳くらいから毎年1%ずつ筋肉が減っていくといわれています。特に中高年の女性は、筋肉が虚弱になりやすく、フレイルとなり介護保険の世話になってしまうことも少なくありません」
そうなるのを避け、元気でいる秘訣は、筋肉を維持すること、さらに鍛えることだ。
「運動や筋トレで筋肉は鍛えられますが、同時に筋肉の材料になるたんぱく質をとることが大事です。より効果を高める秘訣は、朝に摂取すること。なぜなら、 朝食のあとは家事をしたり駅まで歩いたり体を動かしますよね。運動はしたほうがいいですが、日常生活の活動でも体を動かせば、朝にとったたんぱく質は筋肉に変わっていくからです」
「時間栄養学においても、たんぱく質やリコピンなどは、朝から昼にかけての時間に、吸収率の高いことが明らかになっています。さらに、細胞を肥満化させるBMAL1には時間遺伝子が組み込まれていて、夜に働くといわれています。だから夜、過剰に食べると太ってしまうのです。しかし朝食べれば、それを筋肉へと変えられます」
最近は野菜サラダに、かにかまや魚肉ソーセージを足しています
「ズボラ」「手抜き」「頑張らない」がモットーの鎌田さん。実際の朝食には、たんぱく質摂取のアイデアが詰まっている。
「僕にとって朝食で必要なたんぱく質量は、魚か肉100g程度に、さらにたんぱく質20〜30gを加えた量。メインの食材だけでは足りないので、必ず2種類以上の食材からとっています。卵は必ず1~2個食べます。ゆで卵にする日も多いですが、野菜たっぷりの具だくさんみそ汁のお鍋をグツグツさせて、卵を入れ、半熟よりも少しかためぐらいにしてみそ汁の具として食べることもあります。洋食の日はスペイン風オムレツにして、野菜やベーコン、かにかまを入れて食べることが多いですね。たんぱく質量が足りないときは、チーズや納豆を足したり、野菜サラダやみそ汁にかにかまや魚肉ソーセージを加えたりします。小さな高野豆腐を常備してあり、みそ汁に入れることもあります」
鎌田さんが今注目しているたんぱく質食材は、かにかまや魚肉ソーセージだという。
「ウインナーなどと比べると、カロリーや脂質が少ないので、シニア世代には食べやすいと思いますよ。魚肉ソーセージの味に飽きてきたら、フィルムのまま熱湯に1分間入れて温めてみてください。それだけで、できたてのソーセージみたいにジューシーな食感になっておいしいので、ぜひ試してほしいですね。日本のシニア世代は、野菜に関しては口酸っぱくいわれてきたので摂取できている人が多いのですが、欠けているのはたんぱく質。健康で元気な生活を維持するために、ぜひ『朝たんぱく質』習慣を始めましょう」
鎌田式「朝たん」ルール
①朝食はたんぱく質をたっぷり。野菜もたっぷり
「朝たん」がいちばん大事ですが、吸収率が高い朝に、抗酸化力が強い野菜をとる「朝ベジ」も大切です。僕が朝食におすすめしたいのが、葉物や根菜、野菜の切れ端などを入れた「具だくさんみそ汁」。かさが減り、たっぷり食べられます。その分、主食は控えめでいいでしょう。
②「朝4:昼4:夜2」の 比率で食べる
食事の分量は、朝・昼にやや多め、夜はその分、軽くしましょう。朝を抜くとその次に食べる食事の血糖値が急上昇したり、夜に食べすぎると太ってしまったりします。生活スタイル的に難しい方も、せめて朝3:昼3:夜4くらいを目指し、朝食を充実させてください。
③「朝たん」のあとは、効率的に体を動かす
運動をすると筋肉細胞に傷がつき、その傷がたんぱく質により再生されることで筋肉が強化されていきます。「朝たん」で摂取したたんぱく質が筋肉につながるよう、朝食前後にウォーキングや筋トレ体操などをする運動習慣を身につけましょう。
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撮影/佐山裕子、松木 潤(ともに主婦の友社)
写真提供/鎌田 實
取材・文/森山佳織
※この記事は「ゆうゆう」2025年7月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。