【キャシー中島さん・72歳】娘夫婦と互いにストレスなく同居する秘訣とは?[後編]
娘夫婦とは互いにストレスのない距離感をキープ
キャシーさんが作っておいてよかったと実感しているものが、もうひとつ。それは、将来子どもたちと同居してもいいようにと、当時子ども部屋として使っていた2階スペースにも水道や排水設備を設置しておいたこと。おかげで、雅奈恵さん家族との同居に伴うリフォームも、スムーズに進んだそう。
「ただ、雅奈恵たちが住む2階にはシャワーブースはあるけれど湯船はないので、お風呂はわが家と共有。孫たちは私たちが暮らす3階に上がってきてお風呂に入り、私や勝野とちょっと遊んで『おやすみなさい』と2階に下りていくのがいつものコースです。同居した当初は食事も共にしていましたが、娘の夫がスイスの方で、食事の好みも文化もまったく違っていて。これはお互いストレスだし、よくないぞと思って、娘に『食事は別にしようね』と伝えました。今はときどき一緒に外食したり、市販の総菜を差し入れしたりはするけれど、基本的に食事は別々。お互いストレスのない、いい距離感を保っています」
では夫である、勝野さんとの距離感は?
「私たちの暮らすスペースには、個室がないんですよ。屋上に勝野用のちょっとしたコーナーはあるのですが、彼はまったくそこに寄りつかないの(笑)。彼の定位置はリビングだし、私がキルトを縫うのもリビングのテーブルの上。要するに私たちは、家族の息遣いが聞こえる場所にいたいんですよね。私も勝野も両親が幼い頃に離婚して、勝野は祖母に、私は母の知人に預けられて育ちました。そのせいか、家族に対する思いがとても強くて。できるだけ一緒にいたいという気持ちが強いのかもしれませんね」
現在、キャシーさんは72歳。これからもこの家で家族とともに暮らしていくのかと問うと、こんな答えが返ってきた。
「御殿場から越してきたときには、ここが終の住み処になるという考えはなかったけれど、最近、老後に備えてリフォームしようかという話が出てきているんです。リフォームするとしたら、駐車場になっている1階に私たちの住まいを移したい。生活がラクになるということはもちろんですが、それ以上に家族の空気を感じていたいなと思って。今、私たちは3階に住んでいるので、娘たち家族に用事があって2階に下りたとき、誰もいないことがあるんです。でも1階に住んでいれば、家族の『行ってきます』の声が聞こえるし、『行ってらっしゃい』と声をかけることもできるでしょう? そんな暮らしができたらいいな、なんて思っています」
家族の思い出の地に建てたキルトミュージアム
御殿場の家は、「スタジオKキルトミュージアム」として公開。キャシーさんの代表作など、貴重な作品が多数展示されている。敷地内にある緑色の建物は、実はトレーラーハウス。パッチワークキルトのキットや生地を販売している。
取材・文/恩田貴子
※この記事は「ゆうゆう」2024年12月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
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