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【和田秀樹さん】「終活なんていらない!」好きなことだけやって大往生することがなぜ重要なのか?

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志賀佳織

死んだあとのことは「知ったことじゃない」

がんは、体のなかの「できそこない」の細胞が増殖して起こると考えられているが、その「できそこない」の細胞を掃除してくれる免疫細胞は、ストレスによって活性が大幅に落ちると言われている。つまり、我慢することががん死を招くこともあるのだ。そう考えると「健康のために」と我慢してまずいものを食べるより、食べたいものを食べて美味しいと感じるほうがいいし、明日のさまざまな数値を気にして今日の行動を縛るよりも、今楽しいと思うことをしたほうがいい。

「私が35年にわたって、高齢者医療の現場で診療をしてたどり着いた結論が、『人間はどうせ死ぬのだから、今を楽しみ、今を充実させたほうが、先の心配をするより、よほど現実的』であるということです。健康を気遣い、食べたいものを我慢し、飲みたいお酒を我慢しても、薬を飲んでいても、残念ながら死ぬときは死ぬ。年をとると先々のことばかり考えて、生活がどんどん内向きになっていくけれども、むしろ年をとって残り少ない人生になったのだからこそ、好きなことをなるべく我慢しないで人生を楽しんでいただきたいと思います」

高齢者ではなく「幸齢者」

死んだ後に人に迷惑をかけてはいけないと思う人が多いが、それだって「知ったことじゃない」。殆どの、たとえば遺された子どもたちなどは、親の死のお陰でいくばくかの財産ももらうことになるわけで、「迷惑」ばかりでもないはずだからだ。逆に、「迷惑をかけたくない」と言いながら、子どもや孫たちにお墓参りに来てほしいなどと思う人は多い。しかし、そのことが子どもや孫など次世代に強要することになっていないか、それを今一度考えるべきだ。つまり「終活」をして、あれこれ死んだ後のことを人に託すよりも、「死んだら関係は切れる」ぐらいに考えて、互いに気を遣わずに、生きている間に好きなことを思い切りして、死ぬまでいきいきと元気で活動できたほうがいいのではないか、ということなのだ。

「高齢者ではなく『幸齢者』だと私は思っています。『幸齢』はお金があるとか、社会的地位が高いということではなく、自分らしく好きなことをして生きていく世代のこと、本人が幸せを感じるのであれば、もうその人は『幸齢者』です。そういう人たちは、若い世代の希望にもなっていくはず。特に女性は、閉経後、男性ホルモンが増えることもあって元気になる。女性は自身が元気になるためにはお金も使うし、活動的。男性よりも生命力が旺盛なのは間違いありません。その女性たちに、より幸せで充実した『幸齢期』を送ってもらいたいと思っているんです」

撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/志賀佳織 イラスト/ピクスタ
※この記事は「ゆうゆう」2025年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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