【べらぼう】蔦重(横浜流星)が出版した「青本」「往来物」とは?
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鷹橋 忍
洒落本、正本、稽古本
「洒落本」は、遊郭を舞台に、会話形式で書かれた小説です。蒟蒻(こんにゃく)ぐらいの大きさだったため、蒟蒻本とも呼ばれました。遊女の手練手管や、野暮な客の様子なども描かれ、遊郭の指南書としての需要もあったようです。洒落本の呼称が定着したのは、安永年間(1772~1781)頃だといいます。
「正本(しょうほん)」とは、音曲の詞章(音楽的要素を含む演劇作品の文章)を記した本です。蔦重が出した『富本正本』は、富本節の詞を記した本となります。
「稽古本」は、謡曲・浄瑠璃などの稽古用として、詞章に節づけをした本です。
蔦重が経営の柱とした往来物
「往来物」は、幼童向けの教科書です。寺子屋でも使用されました。地理、歴史、手紙の書き方など、多くの種類が刊行されました。商業に関連する語彙や、貨幣単価など記述した『商売往来』も往来物の一種です。
往来物は派手に売れる本ではありませんが、安定した需要があるうえに、同じ内容で刷りを重ねられるため、着実な売り上げが見込めました。
ドラマでも描かれていたように、蔦重も往来物に活路を見いだし、安永9年(1780)から往来物を出版しています。蔦重はこの往来物と、前述の富本節の正本、稽古本を経営の柱とし、出版界を駆け上がっていきます。
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