記事ランキング マンガ 連載・特集

【あんぱん】注目を集めた登場人物は、学ラン姿のいせ(ミセス大森元貴)。崇(北村匠海)の生涯に深く関わっていく——

公開日

更新日

田幸和歌子

「漫画で食べれんでも、私が食べさせちゃるき」

【あんぱん】注目を集めた登場人物は、学ラン姿のいせ(ミセス大森元貴)。崇(北村匠海)の生涯に深く関わっていく——(画像4)

「あんぱん」第92回より(C)NHK

そして、一気に5年の歳月が流れる。嵩は相変わらず三星百貨店で働くいっぽうで、副業としてはじめた挿絵などの仕事が順調で、家計の足しどころか百貨店の給料を上回るほどだということに驚いた。副業で稼げるようになったら会社を辞めてもいいという約束を5年前にしていた。いよいよその時がきた。不安ではないのか? のぶにそう尋ねると、芯のある「はちきん」らしく、全力で応援すると、きっぱり言い切った。

「漫画で食べれんでも、私が食べさせちゃるき。うち、嵩にそういわれたらこう言おうって、5年前から決めちょったもん。待っちょったで」

なんとものぶらしい名台詞ではないだろうか。嵩はなんともおだやかな笑顔で返す。
「お待たせしました」

これまですれ違いや歩く速度の違いを重ねつつもお互いを信頼し合い続ける姿を描き続けてきたからこそ自然と受け入れられるやりとりだ。

いっぽうメイコと健太郎の間には娘が生まれ、メイコのお腹の中には第二子が宿り、その後無事次女を授かる。ある意味のぶと嵩以上にすれ違ってきた二人だが、一気に幸せな家族生活に突入しているようだ。

今週大きな注目を集めた登場人物が、いせたくや(大森元貴)だ。あまり説明の必要はないかもしれないが、大森は3人組人気バンドMrs.GREEN APPLEのボーカル・ギター担当だ。いせは音楽と芝居が大好きな演劇学校の学生として学ラン姿で登場、嵩が通う喫茶店の常連として、嵩たちの会話に参加したりもする気さくな若者だ。

この〝いせたくや〟という役名からも、いせが作曲家のいずみたくがモデルであることはすぐにピンとくるだろう。いずみたくは、「手のひらを太陽に」をはじめ、嵩のモデルであるやなせたかしが作詞をつとめた数多くの楽曲を作曲してきた、やなせの生涯を語るうえでも重要な人物のひとりである。

【あんぱん】注目を集めた登場人物は、学ラン姿のいせ(ミセス大森元貴)。崇(北村匠海)の生涯に深く関わっていく——(画像5)

「あんぱん」第94回より(C)NHK

いせは、メイコが「のど自慢」の予選会に出場する際にはカフェのピアノを使い指導するなど、音楽の才能の片鱗を感じさせるような描かれ方をしていた。学校卒業後、タクシードライバーを経て、これからは音楽で生きていくと嵩に宣言する。会社を辞めていいかどうか迷うたっすいがの背中を押してくれた重要な存在でもある。会社を辞め、本格的に漫画家を目指す嵩と、いせ(いずみたく)の曲の作詞、生み出すものが全く違うわけだが、そのあたりをどう描いていくのか。いせの存在そのものとともに、注目したいポイントである。
「うちにはわかる。ちっぽけな嵩が、いつか天才もびっくりするような作品を創るって」

そんな甘すぎるセリフも、嵩とのぶには、嵩とのぶだからよく似合う。そんなやりとりで締め括られた二人がどう新たな道を一緒に歩いていくのか。次週の放送を楽しみに待ちたい。

▼あわせて読みたい▼

>>【あんぱん】“ようやく”思いを通じ合わせた二人。寛(竹野内豊)の言葉「別々の道を歩んでいても、いつか交わる日がくる」が現実に >>「あんぱん」ヒロインの前にどんどんレールが敷かれていく【朝ドラ】らしさ。そのスピード感に驚かされた >>「あんぱん」これまで別々の道を歩き続けた嵩とのぶの道がようやく交わる【朝ドラ】
画面トップへ移動