88歳・養老孟司先生の抗がん剤体験から考える、病院との“おもしろい”付き合い方「おもしろさが感じられなかったら、さすがに…」
病院に行く理由の1つは、おもしろい経験ができるから
前回の抗がん剤では、白血球の減少という副作用はあったものの、体感できる副作用はありませんでした。
今回は点滴する薬が違っているので、前回と同じようにはならないだろうと思っていました。
医師や看護師も毎回「気分が悪くないですか?」と聞きますが、そもそも点滴に吐き気止めの薬が入っているのですから、特に何も感じません。
それで、医師に「吐き気止めの薬をちょっとやめてもらえませんか」とお願いしたことがあります。
抗がん剤で吐き気がするというのはどういう気分なのか、知りたかったからです。
点滴から吐き気止めの薬を抜いてもらったら、やっぱり少し気分が悪くなりました。
今、病院に行く理由の1つは、おもしろい経験ができるからです。吐き気止めを抜いた抗がん剤を点滴したら、どんな気分になるのかを経験するのも、おもしろいことだと思いませんか。
4月から7月まで、毎回1週間入院して4回抗がん剤をやりましたが、8月からは薬が1種類になり、外来で点滴できるようになりました。
小細胞肺がんにも効く免疫チェックポイント阻害薬(商品名テセントリク)という新薬ですが、入院しなくてもよいのです。外来での点滴は今までなかったことなので、これもおもしろい経験でした。
東大病院では肺がんの治療だけでなく、眼の治療も受けています。僕は黄斑浮腫(おうはんふしゅ)という網膜(もうまく)にむくみができる病気があります。
それで月1回、網膜のむくみを取る注射を眼球内に打っています(抗VEGF治療)。白目から眼球内に注射すると、ときどき空気が入ります。視界にプクプクと泡が見えて、これもおもしろいんです。泡は一晩たてば消えますけど。
やっぱり体のことには興味があるので、そんなこともおもしろく感じます。おもしろさがまったく感じられなかったら、さすがに病院に行きたいとは思わないのではないでしょうか。
Profile
養老孟司(ようろう・たけし)
1937(昭和12)年、神奈川県鎌倉生まれ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。'89(平成元)年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。新潮新書『バカの壁』が大ヒット、460万部超えのベストセラーとなる。また新語・流行語大賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞した。『養老先生、病院へ行く』『唯脳論』『かけがえのないもの』『手入れという思想』『人生の壁』『まる ありがとう』『ものがわかるということ』など著書多数。
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病気と折り合う芸がいる
養老孟司著・中川恵一著
エクスナレッジ刊
がん再発後の治療経過と、病気と折り合いをつけながら、淡々と日々を過ごす養老先生が、生と死について、また子どものこと、虫のこと、ネコのこと、自然のことなど多様なテーマについて語りつくす。
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