認知症の初期。親は何を思っている?家族の心がまえを医師が解説
久しぶりに帰省したら、親の様子がこれまでとは違っていて……。そんな経験はありませんか。親が認知症かもしれないと思ったら、あわてないで、まず認知症を理解することから始めましょう。認知症の初期、本人は「何かおかしい」と感じ始めて不安になっています。川崎幸クリニック院長の杉山孝博さんに伺います。
目次
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認知症は「本人のペースに合わせることは難しい」 だから、完璧を目指さないで!親の変化に気づいたら、チェックリスト
「親の様子がこれまでとなんとなく違う」と感じたら、もしかしたら認知症かもしれません。
下記に示した親の変化に気づいたら、いつ(年月日)、どんな言動をしたかについて、手帳やスマホに記録しておきましょう。こうした記録があれば、親族や医師などに親のことを説明するときに役立ちます。
もの忘れがひどい
□ いま切ったばかりなのに電話の相手の名前を忘れる
□ 同じことを何度も言う、問う、する
□ しまい忘れ、置き忘れが増え、いつも探し物をしている
□ 財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う
判断・理解力が衰える
□ 料理・片づけ・計算・運転などのミスが多くなった
□ 新しいことが覚えられない
□ 話のつじつまが合わない
□ テレビ番組の内容が理解できなくなった
時間・場所がわからない
□ 約束の日時や場所を間違えるようになった
□ 慣れた道でも迷うことがある
人柄が変わる
□ ささいなことで怒りっぽくなった
□ まわりへの気づかいがなくなり頑固になった
□ 自分の失敗を人のせいにする
□「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた
不安感が強い
□ ひとりになると怖がったり寂しがったりする
□ 外出時、持ち物を何度も確かめる
□「頭が変になった」と本人が訴える
意欲がなくなる
□ 下着を替えず身だしなみにかまわなくなった
□ 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
□ ふさぎ込んで何をするのもおっくうがり、いやがる
(公益社団法人 認知症の人と家族の会)
記憶力は低下しても、喜怒哀楽は残っている
認知症になったら、何もわからなくなるのでしょうか?
かつては、認知症になると「何もわからなくなる」「人間性が失われてしまう」といった、誤った考え方が広まっていました。
けれども、今は違います。認知症になって記憶力や判断力が低下したとしても、本人の感情や感性はむしろ鋭敏であることがわかっています。本人が感じた喜怒哀楽は、ずっと残っている場合が多いのです。
たとえば、親子で口げんかをしたとします。けんかをした原因や内容は忘れてしまっても、「子どもともめた」という感情や感性は残っているのです。
本人も何かおかしい、と感じ始める
それでは、本人は自分が認知症になったということがわかるのでしょうか?
認知症の初期は、もの忘れが多くなったことを本人も自覚しています。「頭が変になった」「何かおかしい」などと感じているのです。「わたし、頭がおかしくなったわ」「急に歳をとった気がする」と口にすることもあります。もの忘れを自覚していなくても、「不思議なことが起こる」と戸惑う人もいます。
そのうち、もの忘れによる失敗やミスが目立つようになると、日に日に不安や焦りが強まっていきます。不安な気持ちからイライラが募り、怒りっぽくなる人もいます。
しかし、そういう気持ちを人に悟られないように取り繕う人もいるので、周囲の人が本人の変化に気づかないことはよくあります。