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【虎に翼】腐れ縁のような桂場(松山ケンイチ)の“顔芸”の強さもあいまって、「桂場がいるなら大丈夫」という安心感を覚える

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田幸和歌子

わかっていても本来の寅子はなかなか表に出すことができない。小橋にすら、「大人になったなって」とイジられ、かつてのお前ならすぐ「はて?」「はて?」と噛み付いていたと指摘される始末。「大人になる」というのはそういうことなのだろうか。おそらく違う。

「僕の大好きな、あの何かに無我夢中になってるときのトラちゃんの顔をして、何かをがんばってくれること」
思い出の中の優三が語りかける。そして、偶然再会した花岡(岩田剛典)と弁当を食べながら交わした会話も、懐かしさとともに、それぞれの境遇や過ぎた時間を実感させる。

そんななか現れたのは恩師の穂高(小林薫)だった。かつて、寅子たち女性の活動をいつか石を穿つための水滴のひとつとし、今はまだ無理だがいつかの未来ならという視点からの物言いによって、寅子の気持ちを折った人物でもある。穂高は、以前から新しい世の中に向けての進歩的なものの見方をする一方で、優しい。過去に寅子の気持ちを折ったのも、その優しさゆえのもので、悪意などどこにも存在しなかったことは明白だ。

穂高は、寅子の父や夫が亡くなったことを知り、「君をこの道に引きずり込み、不幸にしてしまった」と頭を下げる。不幸とは? おそらく寅子は法を学んできたうえで、それを不幸ととらえたことは一度もないだろう。しかし穂高にとってはずっと背負ってきた罪悪感であり、解放させてあげたいという思いがある。

穂高は寅子に息子の家庭教師の職をすすめる。穂高にとっては間違いなく善意だ。しかし、罪悪感と責任感が、法の道から寅子を、女性たちを遠ざける。これは、穂高の「スンッ」である。

「はて?」「はて?」
もちろん穂高の言葉は真っ向から反論するようなものではないが、女性は弱いものであるという意識から出たものであることは感じ取れる。

「スンッ」と「はて?」、序盤から提示されてきた概念に再び立ち戻る。戦争は何をもたらしたのか、GHQによる政策で変わらないものもたくさんある、そういったこの時点での「現実」を、周囲の軽い失望、そして善意という形でズブリと差し込まれた寅子は、「スンッ」を理解したことで「らしさ」を取り戻すことができるのだった。

そんな最中に告げられた、花岡の死。寅子が取り戻した「はて?」は、さらなる地獄を突き進む。

「虎に翼」より(C)NHK

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