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【虎に翼】朝ドラとしては異例の尺!実に4分にわたり判決文を読み上げた、原爆裁判の歴史的意義とは?

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田幸和歌子

「国家は自らの権限と、自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである。原爆被害の甚大なことは、一般災害の比ではない。被告がこれに鑑み、十分な救済策を執るべきことは多言を要しないであろう」

ただしこれはもはや、裁判所だけではなく立法と行政の存在意義にも関わる問題であるという。

「終戦後十数年を経て、高度の経済成長をとげた我が国において、 国家財政上、これが不可能であるとは到底考えられない。我々は本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられないのである」
汐見はこう締めくくった。

実に4分におよび読み上げられた判決文は、実際の裁判でのものとほぼ同じだという。一般的なイメージの「朝ドラ」としては異例の尺に、マスコミもSNSも大きく盛り上がったが、あの東京裁判でも問われることのなかった原爆投下の責任を、国際法違反と断じたこの判決文をそのまま流したこと、それは「虎に翼」というドラマが歴史に刻んだ大きな役割だと言えるだろう。

結果的に、原告らの請求は棄却され、訴訟費用は原告らの負担とすると主文が読み上げられる。こうして8年におよび原爆裁判は国側の勝訴で幕を下ろした。この裁判の存在が、のちの原爆特別措置法(1968年)、被爆者援護法(95年)などへとつながっていくことになる。

8年という年月は、おもな登場人物たちにも変化がみられた。長らく描かれ続けてきた、梅子(平岩紙)が作る団子の味を、桂場(松山ケンイチ)がようやく認める。そして竹むらは高齢となり引退することとなった店主は、あんこの味を引き継げそうな梅子に店を託す。そこに修行を続けてきた寿司屋の大将も引退したことで、今後に迷いのあった道男(和田庵)に声をかけ、「和菓子とお寿司」の店を開店するという意外な展開が訪れた。

「虎に翼」第115回より(C)NHK

齢を重ねた寅子は更年期障害に悩むが、思春期からその重さに悩まされてきた「お月のもの」から解放されるという、ある種の喜び、そして、「あらあら、寅ちゃん、こちら側へようこそ」と歓迎ムードで受け止める梅子、そのような描写もまた、加齢は悪いことばかりではないというエールを、若き脚本家が提示したような気がした。

いっぽうで、認知症が一気に進んでしまった百合(余喜美子)の、ジェンダー描写も含め、やや現代的視点ではあるものの、加齢の残酷さを突きつけられ、原爆裁判とともに、やはり甘い部分のないドラマであることををあらためて実感する週であった。

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