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【虎に翼】実は遠くから見守っていた桂場(松山ケンイチ)。その仏頂面がどう変わっていくか、距離感は変わらずなのか

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田幸和歌子

【虎に翼】実は遠くから見守っていた桂場(松山ケンイチ)。その仏頂面がどう変わっていくか、距離感は変わらずなのか

「虎に翼」第107回より(C)NHK

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1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。困難な時代に立ち向かう法曹たちの姿を描く「虎に翼」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

★前回はこちら★
【虎に翼】星家の面々が昼ドラ的関係になったりしていかないか、要素てんこもりでつい「尺」が気になる21週

伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『虎に翼』の第22週「女房に惚れてお家繁盛?」が放送された。

今週描かれたエピソードのひとつが、東京地裁判事補で寅子が「懐かれている」秋山(渡邊美穂)の妊娠をめぐる問題から、女性の法曹界での地位について再び考えるターンがやってきた。

秋山は、母になること自体はうれしい、しかし働くことについての心配がつきまとうと本音を打ち明ける。女性は男性の3倍頑張らないとと母親に言われてきたという秋山は、
「私は(人の)5倍がんばって、いつも綺麗な姿でなんてことないようにふるまってきた。やっと少しずつ仕事で認められるようになったのに。自分でやっと切り開いた道を自分で閉ざさなきゃいけない」

優三(仲野太賀)との間に子を授かったものの、そこでキャリアを一度手放す選択をすることになった寅子は、かつての自分が経験した「地獄」を思い出す。

子育てが一段落したら戻ればいいじゃないかと、何の保証もないのに穂高に悪気なく言われた日のことを。そして号泣しながら「六法全書」を〝封印〟した日のことを。寅子の空白期間に同期はどんどんキャリアを重ねていく。そこにあせりやいらだちを抱えていた自分を。

働く女性にとっての出産・育児期間は、夫が育休を取れる制度を導入する会社が出てくるなど少しずつ環境は変わってきているが、現在までずっと続く問題である。

「虎に翼」第108回より(C)NHK

平等とはなにか? この週に盛り込まれた、法曹に興味を持つ中学生むけの「勉強会」でも、生徒の一人が「女は働かなくていいんだから、そっちのほうが得だろ?」とそれが当たり前のように言ったことからも「女性が男性と同じように働く」という感覚が全くないことに気付かされる。

当時の女性に認められていたのは、出産前後それぞれ6週間の休業申請だけ。
「もしあなたが判事を続けたいのなら、あなたの居場所は必ず残すから」
こう秋山に言った寅子は、その環境をよくするため、後輩たちを守るべき道のため、意見書を桂場(松山ケンイチ)に提出するが「時期尚早だ」とはねつけられる。もっと法曹界に女性が増えてからでないと難しいと。作中の昭和31(1956)年時点では、女性裁判官は増えたとはいえ、まだ12名。女性の法曹界の本格進出というにはまだまだ程遠い。

しかし、この問題を次の世代に課題として残していくことが苦しいという寅子は「別の道を探す」と、弁護士、検事、裁判官、そして主婦、その環境はさまざまだが、根底に流れる思いが同じはずのかつての仲間たちを集め、意見書を最高裁事務総局に提出するため、力を貸してもらう。みんなは甘味処「竹もと」に集い、弁護士や検事、家裁関係者など、多数の署名も集められた。

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