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【虎に翼】最高裁の大舞台で、よね(土居志央梨)に寅子の口癖「はて?」をシンクロさせた、最終週の演出がいい

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田幸和歌子

〝日本史上初めて法曹の世界に飛び込んだ、一人の女性の実話に基づくオリジナルストーリー〟(NHK公式サイトより)というテーマから、ヒロインが法曹の世界で地位を築いていく奮闘ぶりを半年かけて描いていくものかと最初は思っていた部分もあったが、それはほんの前半まで。

先にあげたあまりにも多くの、現代の社会が今なおかかえ、我々が考えていくべきテーマが次々に繰り出される作品となった。そのため、後半は「重すぎる」「前半からの落差がすごい」という感想も多く見られることとなったことも事実である。そして、あまりにも描くべき、考えるべきテーマが多岐にわたりすぎたぶん、半年の尺に収めきれなかった部分もあると思う。

しかし、このような問題が今なおすぐそこにあり続けるということを視聴者に意識させたという大きな意義を持つ朝ドラになったこともまた、揺るぎない事実である。寅子たちは、作中で描かれたように、石を穿つ雨垂れの一滴にすぎなかったのかもしれないが、一滴がなければ永遠に石を穿つことはできない。『虎に翼』もまた、この先の世のための一滴となるドラマとして放送を終えたような気がする。

「虎に翼」第129回より(C)NHK

『虎に翼』で米津玄師が手がけたオープニング曲「さよーならまたいつか!」に、
<100年先も憶えてるかな>
という歌詞がある。

100年前の社会で「はて?」と言ってくれた人たちがいたことで、今の社会があり、いっぽうで、「憶えてる」というより100年後もまだ残る議論もある。現代の社会がそのまま続く限り、すべての人が幸せになる着地点はもしかしたらこの先の100年もまだ見つからないかもしれない。しかし、「憶え」ることが未来へと繋げることとなる。なんとも勇気づけられるような気がする名フレーズだった。

そしてこのオープニングでダンスする寅子たちや、社会の中で揉まれ生きる女性たちの姿が描き出されたアニメーションとのマッチングも素晴らしく、歴代のオープニングでも最高傑作ではないだろうか。

9月に放送された米津玄師と「虎に翼」の特番で、寅子と〝魔女5〟、そして玉ちゃん(羽瀬川なぎ)たちキャストが集結、番組の最後に、彼女たちがオープニング曲に乗って同じ振り付けで楽しそうに踊る姿が放送された映像は、ずっと時には辛く苦しいそれぞれの戦いが浄化されるかのような多幸感あふれる仕上がりで、できればこの特番限りでなく、本編の最終回にでも流してほしいぐらいだった。

最終回は平成時代が舞台となり、寅子はすでに優三らのもとに旅立った世界だった。寅子の戦いは終わったが、ドラマで提示された戦いの一部は今も、そしてこの先も誰かが法という武器、あるいは法では測れない問題であっても、戦い続けている。そのようなことを、あらためて意識させてくれたドラマだったのではないだろうか。

さよーならまたいつか!

「虎に翼」第129回より(C)NHK

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