「雨でも嵐でも48キロの山道を千日歩き続けました」その苦境を乗り越える方法とは?【塩沼亮潤さん】エッセイ『くらしの塩かげん』
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ゆうゆう編集部
くらしの中の「当たり前」には人生の本質や智慧が隠れています。過酷な修行を経た福聚山慈眼寺(ふくじゅさんじげんじ)住職・塩沼亮潤さんが優しい言葉でつづる珠玉のエッセイ『くらしの塩かげん』をご紹介します。
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『くらしの塩かげん』
塩沼亮潤著
「清潔感は、最高のお洒落。」「直して使うと、豊かになれる。」「毎日、同じことを同じように。」など、日常に潜んでいる人生の本質をシンプルな言葉で伝える。多彩な写真も楽しく癒やされる。
世界文化社 1760円
往復48キロの山道を千日間ひたすら歩き続けて
塩沼亮潤さんの笑顔は心地いい。穏やかで、おおらか。この笑顔に救われる人は多いだろうなぁと思うのだが、「笑顔は、自分自身をもラクにしてくれるのです」と塩沼さんは話す。たとえば洗濯物をたたむとき(塩沼さんの苦手な家事ナンバーワン)、ガソリンスタンドで給油を待つとき(忙しいときはイライラしそうになる)、常に笑顔を心がけている。
「苦手なことこそ笑顔で行うと、自然と楽しくなります。それを実感したのは、千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)の修行中でした。どんなにつらく苦しくても、笑顔を心がけると肩の力が抜けてラクになりました」
千日回峰行とは、文字どおり千日間、山を歩く修行である。塩沼さんは奈良県吉野山の金峯山寺(きんぶせんじ)蔵王堂から頂上にある大峰山寺(おおみねさんじ)本堂まで、標高差1355メートル、往復48キロの道のりを日参した。期間は毎年5月3日から9月初旬までの4カ月間で、9年をかけて千日を達成する。その期間1日も休むことは許されない。金峯山寺史上2人目の達成者が塩沼さんという厳しさである。
「出発は夜中の0時30分、戻りは15時30分と決めていました。雨でも嵐でも関係ありません。ひざに水がたまっても、足の裏全体に血マメができても、ぎっくり腰のような状態でも、毎日毎日深夜に起き、身を清め、歩き続けました」
命の危険にもさらされた。
「11日間にわたって高熱と下痢に襲われたことも、熊やイノシシに遭遇したときもありました。でも修行を途中でやめるという選択肢はないので、どんな状況でもポジティブでいるしかない。1日も手を抜かず、笑顔で楽しみながら千日続けたことは、私にとって大きな自信になっています」
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