【中山優馬さん】「所属事務所からの独立は不安より楽しみのほうが大きいですね」
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ゆうゆう編集部
ヒリヒリするような難役への挑戦を楽しんでいきたい
そんな中山さんがこの冬挑むのが、舞台『血の婚礼』だ。スペインを代表する劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカが実際の事件をもとに執筆したとされるロルカ三大悲劇の一つだ。互いの家族の期待を背負いながら結婚式を迎えようとしている一組の男女のもとに、突如、花嫁の昔の恋人が現れすべてを変えていく。中山さんが演じるのは、その花嫁のかつての恋人・レオナルドだ。
「物語がシンプルなだけに、台本の中からは得られない感情が渦巻いている。その意味で、演者に任されているものが多い作品だなと思うんです。時代や文化的な背景が違うから、あまり現実的なこととしては考えにくいけれども、でも現代人だって、みんな心の中にそれぞれ抱えていて抑えているものが、多かれ少なかれある。人生に一度は理性みたいなものを脱ぎ捨てて行動を起こす瞬間っていうのがあってもいいんじゃないかと思えるような作品とキャラクターですね。愛ってそういうものなんだろうなというのはわかる気がします」
演出の栗山民也さんとは『にんじん』『ゲルニカ』に次いでこれがタッグを組んで三度目の作品となる。その栗山さんは、今回の中山さん起用の理由を「ヒリヒリとしたロルカの詩の世界観をちゃんと背負えて体現できる人だから」と語っているという。
「本当に嬉しいですね。その期待どおり、僕もそのヒリヒリに挑戦したいし、できることなら毎回そういう俳優でありたいと思います」
30代になって少し肩の力が抜けた
役づくりに臨むときは徹底的に「理詰め」でいくという。
「普段は面倒くさがりやでカスみたいな人間ですけど(笑)、仕事に関してだけは真面目であろうと心がけています。やはり人の感情を動かす仕事なので、何に自分の感情が動いたかを説明できるように、その時々でメモを取ったりしています。たとえば映画を見て大体1本につき1回は泣くんですけど、何で泣いたのか、何で感情移入したのかが知りたい。それを理論的にひもといて分析するんです。いや、天才的な人っているらしいじゃないですか。『別に台本もそんなに読まないし』とか言える人。それで演じられるなら僕だってそうありたいですよ(笑)。でも、それができないから、階段を1段ずつ上って記録して、どこで間違えたかをわかるようにして進んでいくしかないんです」
「30歳のときにはしっかりした自信をもてる俳優になっていよう」と目指してきたが、30歳を過ぎたら肩の力が抜けた。これからはもっと自由に楽しめていけそうな気がする。
野球をしたり、旅行に行ったり、バーベキューをしたり、市場に食材を買いに行ってプロ顔負けの料理をしたり、愛犬と楽しい時間を過ごしたり。今、公私ともに充実している。家族の仲がよく、両親や姉と妹と過ごす時間も大切にしている。25年にはいよいよ所属事務所から独立する。
「独立が不安か楽しみかと聞かれたら、楽しみのほうが上回っています。人生は1回しかないので、いい30代にしたい。どうしても結婚とは思いませんけど、そういう人生の動きがあってもいいなと思う。そうした経験の後の自分がどんな芝居をするのかも楽しみですし。とにかくいい芝居がしたい。これからも、一段一段愚直に上っていくだけだと思っています」
そういえば出演作には喜劇より悲劇が多い。自身もそのほうが好きだ。
「優勝したチームより、敗北したチームのほうが、僕は自分を投影できる。一緒になって悔しがれる。そういうタイプなのかな(笑)」
【INFORMATION】『血の婚礼』
スペインの灼熱の大地、アンダルシアを舞台に繰り広げられる、愛と運命の物語。互いの家族の期待を背負いながら結婚式を迎えようとしている一組の男女のもとに花嫁の昔の恋人が現れ、運命の歯車が狂い始める。沈黙を破って噴き出す、言葉を超えた血の衝動。伝統と因習に縛られた男たちの誇り、女たちの切なる戦い。演出は日本演劇界の巨匠・栗山民也。
作/フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻案・台本/木内宏昌
演出/栗山民也
出演/中山優馬、宮崎秋人、伊東 蒼、岡本 玲 他
東京公演:12月7日(土)~18日(水) 会場/IMM THEATER
兵庫公演:12月28日(土)、29日(日) 会場/兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール
㉄サンライズプロモーション東京
☎0570-00-3337(平日12:00~15:00)
※この記事は「ゆうゆう」2025年1月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
撮影/中村彰男
スタイリング/柴田拡美(Creative GUILD)
ヘア&メイク/二宮紀代子
取材・文/志賀佳織
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