【年金の繰下げ受給】年金額が増えても、手取り額が増えない場合もあるので要注意!
年金が増えても、税金と社会保険料で3割くらい引かれる
それでは、年金額が増えて課税される場合、税金や社会保険料がどのくらい増えるのかをご紹介します。年金収入にかかる税金は所得税が5%、住民税が10%の合計15%が一般的です。これに、国民健康保険料と公的介護保険料の負担が加わります。
国民健康保険料は、自治体によって比率が異なります。たとえば東京都千代田区は10.37%、大阪府大阪市は12.68%、愛知県名古屋市は11.89%、福岡県福岡市は9.66%です。65歳以上の人が支払う公的介護保険料は、比率(割合)で計算するわけではないため、増額となる保険料額を数字で説明できませんが、公的介護保険料を除いた税金と社会保険料だけで、収入の25%以上が差し引かれる計算になります。これに公的介護保険料の増額分が加わるわけですから、繰下げ受給で年金が年間10万円増えたとしても、手取りでは7万円くらいしか増えないのが現実なのです。
加給年金がもらえる家庭は国民年金だけ繰下げる方法も
繰下げ受給には、別の注意点もあります。たとえば、厚生年金に20年以上加入していた人に、年下の配偶者がいる場合、配偶者が65歳になるまでは「加給年金」が支給されます。加給年金は配偶者手当のようなもので、加入者の生年月日によって異なりますが、1943年4月2日以降の方は年40万円くらいになります。
ところが、繰下げ受給を選択している期間は本人の年金支給がありませんので、加給年金の支払いも停止してしまいます。繰下げ受給は厚生年金と国民年金のどちらかだけ行うこともできますので、厚生年金は繰下げず、国民年金だけを繰下げれば、加給年金は支給されます。
以上のように、繰下げ受給は年金額を増やせるメリットはありますが、増額分をそのまま手にできない可能性も理解しておきたいところ。自分の年金額と税金や社会保険料の負担増も踏まえて、繰下げ受給を慎重に選択しましょう。
●法制度などは、2024年12月現在のものです。
※この記事は「ゆうゆう」2025年2月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
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ファイナンシャル・プランナー
畠中雅子
ファイナンシャルプランナー(CFP®️)。新聞、雑誌、ウエブなどに多数の連載、レギュラー執筆を持つ。セミナー講師、講演、相談業務、金融機関へのアドバイス業務なども行っている。高齢者施設への住み替え資金アドバイスをする「高齢期のお金を考える会」や、ひきこもりのお子さんの生活設計を考える「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。『70歳からの人生を豊かにする お金の新常識』(高橋書店)、『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる』(すばる舎)、『病気にかかるお金がわかる本』(主婦の友社・共著)など、著書、監修書は70冊を超える。
ファイナンシャルプランナー(CFP®️)。新聞、雑誌、ウエブなどに多数の連載、レギュラー執筆を持つ。セミナー講師、講演、相談業務、金融機関へのアドバイス業務なども行っている。高齢者施設への住み替え資金アドバイスをする「高齢期のお金を考える会」や、ひきこもりのお子さんの生活設計を考える「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。『70歳からの人生を豊かにする お金の新常識』(高橋書店)、『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる』(すばる舎)、『病気にかかるお金がわかる本』(主婦の友社・共著)など、著書、監修書は70冊を超える。