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驚きの800km!【黛まどかさん】が語る「歩く旅」。サンティアゴ巡礼や四国遍路から得た人生の気づきとは?

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ゆうゆう編集部

すべての命とつながっていると感じる瞬間

長い距離を歩いていると余計なものがそぎ落とされ、「丸裸になったような自分になる。すると感覚が立ってきて本能もよみがえってくる。たとえば道が分かれていても、風のにおいや軽さから行く道がわかるようになるんです。常にアンテナを立てて感覚を総動員しないと、生死に直結しますから」

毎年、亡くなる人がいるサンティアゴの巡礼、お遍路さんでも命を落とす人はいる。

「本当に命がけ。いかに普段、自分が漫然と生きているかがわかります」

山の中をひとり歩いていると、すべての生き物、命とつながっている、と感じる瞬間が訪れる。

「鳥がさえずりだし、虫が鳴き、川が水音を立て、花が語りかけてくるんです。空海の『五大に皆響きあり』という言葉があります。五大は土、水、火、風、空。自然のすべてとつながっているのが、体でわかります。二度目の遍路では、山道で突然、山鳴りを聞きました。ヘリコプターかなと思いましたが、山鳴りでした。大昔にこの道を歩いた人も、皆感じていたのだろうなと、過去の人の思いと通じ合ったことに感動しました」

黛まどかさんが歩いた祈りの旅ヒストリー③ 四国遍路88カ所(2017年 4月~6月)1400km

真鍋俊照の著書の一節「四国遍路は一度は父のため、一度は母のため、一度は自身のため、三たび巡礼せよ」に背中を押されて出立。

南無大師遍照金剛夕焼けぬ

驚きの800km!【黛まどかさん】が語る「歩く旅」。サンティアゴ巡礼や四国遍路から得た人生の気づきとは?(画像9)

四十六番の手前、三坂峠を下りきった集落で迎えた夕焼け。この後、一匹の蛍に出合う。

「父のために」と歩いた初めての遍路。「肉体を駆使しながらも、出会うものすべてが新鮮でした」。旅の最後にできたのが「南無大師」の句。「お遍路では常に弘法大師空海がともにあるという意味の『同行二人』という言葉がありますが、実際に歩き始めると、ずっと影のようについてくるもう一人がいました。自分自身です。四国の自然に身をゆだねて歩き続け、遍路の果てに出会ったのも、やはりまぎれもない自分自身でした」

黛まどかさんが歩いた祈りの旅ヒストリー④ 二度目の四国遍路108カ所(2023年 9月~11月)1600km

八十八霊場に空海ゆかりの二十の別格霊場を加えた百八を、2カ月かけて巡拝。仏教の「空」と「無」に向き合い続けた旅。

降る雪の遥かより降るもの確か

驚きの800km!【黛まどかさん】が語る「歩く旅」。サンティアゴ巡礼や四国遍路から得た人生の気づきとは?(画像11)

一面雪に。「よくここまで歩いてきたね、というお大師様と父からのギフトだなぁと」

「一回目の遍路から3年後、父が亡くなり、母が大病を患い、二回目までは6年の歳月が経ちました。一度目の遍路が素晴らしかったことも、決断までに時間がかかった理由の一つ。二回目は少し余裕ができ、より自分の内側に目が向く遍路となりました。一期一会をより意識するようにもなりました」。34度という残暑厳しい日から、彼岸花やコスモスの季節を過ぎ、終盤近くには山中で雪が舞う神秘的な光景に出合う。

黛さんにとって「歩く」意味

枯野より出でて虚空へつづく道

驚きの800km!【黛まどかさん】が語る「歩く旅」。サンティアゴ巡礼や四国遍路から得た人生の気づきとは?(画像12)

父の供養、母の健康祈願、ウクライナやロシアの友人たちの無事を祈りながら歩いた1600キロ。

遍路では「無」になるために歩く人も多く、外国人も「エンプティ」を体験したくて来たという人が多かったという。「毎日、般若心経を唱えていると、無って何? 空って何?と突き詰めて考えながら歩くことになります。二回目のお遍路では生きづらさを抱えている人との出会いが多くあり、彼らこそ虚空を見、空を生きている、と感じることがありました。歩くことで多くの気づきを得られる、かけがえのない一期一会があります」

私の同行二人 人生の四国遍路

黛まどか著
新潮新書

自身の半生を振り返り、過去・現在の数知れない巡礼者に思いをはせ、転倒によるケガや道に迷うなどのアクシデントに見舞われながらも、歩き続けた2カ月間の記録。

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撮影/佐山裕子(主婦の友社) 
取材・文/田﨑佳子

※この記事は「ゆうゆう」2025年11月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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