【泉ピン子さん・78歳】夫の先祖の墓には入りません。死んでまで“渡る世間は鬼ばかり”は勘弁よ
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ゆうゆう編集部
棺に入れるのは恩師二人からの暖簾と着物
一方、潔く手放したものもある。
「長い女優生活で、映画や舞台の演技賞をいくつかいただいたけれど、ブロンズ像も賞状もほぼ捨てました。だって、私が死んだあと、夫が困るでしょ。妻が頑張った証しを簡単には捨てられないと思う。だから私が自分で処分してあげたの。ただ、国からいただいたご褒美、旭日小綬章の勲章は別。私の骨壺に入れてもらいます」
「お葬式はしません、戒名もいらない」と言いつつ、こんな要望を口にする。
「私が結婚したとき、尊敬する杉村春子先生に藤の花の着物をいただいたんです。死装束は、その着物をかけてもらうの。それと、暖簾。役者は舞台に出るとき、楽屋の入り口に暖簾をかけるんだけど、暖簾は先輩から贈られるのが、しきたり。私は杉村先生と橋田先生から素晴らしい暖簾をいただいて。それもお棺に入れてもらいます」
「橋田先生のように逝きたいわね」とポツリとつぶやく。
「桜の季節。家のベッドから大好きな桜を眺め、眠るように息を引き取った。私が死化粧をし、顔の周りに桜やチューリップなど庭の花を飾ったの。最後は『千の風になって』の曲を流して、みんなで歌いながら送りました。私のときは、矢沢永吉様の歌をかけてもらいたい。キャロル時代から永ちゃんのファン。推し歴50年よ」
ピン子さんはエンディングノートなどは作成しておらず、こうした希望を夫や親しい人に口で伝えている。「私が言ったとおりにしてくれなかったら夫を恨む」と笑う。
夫より自分のほうが先に逝く、という前提で話をするピン子さん。
「うちは夫が4つ下だしね。残されたほうは、いろいろ手続きや始末をしなきゃいけないし、面倒くさいでしょ。私は先に逝きたいわ」
終活より今の健康が大事。生きがいは仕事と大谷君
終活にエネルギーを注ぐより、「今の自分のために時間とお金を使いたい」と言う。
「ピンピンコロリが理想。そのためには生きているうちは健康でなきゃ。私、家にいるときは料理は自分で作り、夫にインスタントものを食べさせたことがないんです。ところが今は、平日に夫は東京で仕事をして、週末だけ熱海に帰ってくる。自分一人だと料理するのも億劫。りんごばかり食べていたら、病院の血液検査で、栄養失調と言われちゃって。以来、たんぱく質をたくさん取るように心がけています。週末は豚しゃぶと、夫が買ってくるお刺身が定番」
体調を整え、4月末から声舞劇の全国ツアーに臨む。
「決して観に来てくださったお客さまに損はさせませんよ。芸能生活50年以上の私の集大成。さっきも言ったように、人間いつ死ぬかわからないからね。いつだって、これが最後のつもりで、全力で取り組みます。千秋楽の7月までは死ねません」
と真顔で語ったあと、「私、今年のWBC(ワールドベースボールクラシック)を見るまでは死ねない、と言っていたんだけど、また欲が出てきて、次も見たいわね」と頬をゆるめる。
ピン子さんの今の“推し”はドジャースの大谷翔平選手。
「大谷君の活躍を見るのが生きがい。リビングの特等席で応援するだけでも興奮するのに、昨年、東京ドームで行われたドジャース対カブスの開幕戦を見に行ったのよ。こうして話しているだけで顔がにやけてきちゃう(笑)」
「ちょっと待って」と指折り数えて、「次のWBCは何年? 2029年……私いくつ? 81! うーん」と考えたあと、こう結んだ。
「それまでは生きているわよ。でももし死んじゃったら……大谷君がバッターボックスに立ったとき、私、相手ピッチャーの肩の上に乗ってド真ん中に投げさせる(笑)。終活なんか考えるより、そういうくだらないこと考えているほうが楽しいじゃない。まぁお墓も建てたし、棺に入れるものも決まっているし。死んだあとのことは夫か誰かがやってくれるわよ」
【Information】声舞劇!『終活を始めた途端、 55歳の息⼦が帰ってきました』
かつて⺟に暴⾔を吐いて家を⾶び出した息⼦が、55歳になって突然実家へ帰ってくるところから始まる物語。⺟と息⼦が少しずつ向き合い、再び“家族”としての絆を取り戻していく姿を描いたエンターテインメント。泉ピン⼦&佐藤隆太が親⼦役で共演する声舞劇(せいぶげき)。
原作/保坂祐希 『「死ね、クソババア! 」と⾔った息⼦が55歳になって帰ってきました』(講談社)
脚本・演出/シライケイタ
出演/泉 ピン⼦、佐藤隆太、星野真⾥、あめくみちこ
【東京公演】
4⽉25⽇(⼟)16:30開場/17:00開演
4⽉26⽇(⽇)13:30開場/14:00開演
会場/シアター1010 ※5月~ 全国ツアー
公式サイト/https://shukatsu-hahamusuko.com/
企画・制作/終活⺟と家出息⼦ 製作委員会
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撮影/山田崇博
スタイリング/森外玖水子
ヘア&メイク/林 香織(ヘアーベル)
取材・文/村瀬素子
※この記事は「ゆうゆう」2026年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
