84歳の私が“はるか昔の私”へ宛てた手紙——「あっという間だったわ」毎日、声を上げて笑うといい
愛しい人よ、かつてわたしだった小さな少女よ、伝えたいことがある。聞いてもらえるだろうか。
完璧である必要はない。わたしたちは皆、ただの人間なのだ。自分はまだまだだと、人はいつから思い込むようになったのだろう。完璧でなければいけないと、いつ刷り込まれたのだろう。あるいは、何かを成し遂げなければ(本を執筆したり、発明や発見をしたり、家や土地を手に入れたりしなければ)人から愛されないと、いつから信じ込むようになったのだろう。そしてなぜ、愛されることのほうが、自分自身を愛で満たし、その愛を滝のようにあふれさせて——世界に——注ぐことよりも大切だと思い込んでしまったのだろう。
......ただ幸せであればいい。悪いことが起こるのではないかと心配するのは、その悪いことが本当に起こるように祈っているのと変わらない。 どんな思いも、考えること自体が祈りになる。だから、愛しい人よ、自分の考えを静かに見つめてごらん。そしてこう自問してみるといい。自分は今、求めているのか、それとも与えているのか、と。
正真正銘の祈りは、幸せを願う祈りだけだ。まだ到来していない未来という池に、釣り糸を垂らしてはならない。無用な恐れを抱いたり、過去の過ちを必要以上に悔いたりして、自分を苦しめてはならない。失敗はただのメッセージだ。次はどうすればもっと首尾よくできるかを教えてくれているにすぎない。
毎日、声を上げて笑うといい。
モリーはインドに暮らす友人のダイアンから今日こう言われたそうだ。「わたしは『安らかに眠れ』なんて決まり文句が大嫌い。死ぬときに静かに永遠の眠りに身をゆだねるなんてだめ。安らかに眠るなんて考えず、問題や困難を克服し続ける人生を選ぶべきよ」
モリーからこの話を聞いて、思わず声を出して笑ってしまった。憂鬱だった気持ちもすっかり消えた(今日はつらい1日だったのだ)。そう、怖がらずに、良いことも悪いこともすべて受け入れて、豊かに生きていけばいいのだ。
わたしはこんなに贈り物を授かってきた……おそらくあと10年くらいしか残されていないだろうけど、この地球、このエデンの園、苦しみと歓びの学び舎(や)、愛を注ぐこの場所を、心ゆくまで愛でることができるだろう。
未来のわたしよ、幸せで健やかであれ。あなたは充実した人生を歩んだのだ。
愛をこめて
ソフィ
著者紹介
ソフィ・バーナム
1936年生まれ。アメリカの作家、劇作家、エッセイスト、詩人。著書16冊を刊行している作家であり、そのうち3冊は「ニューヨーク・タイムズ紙」のベストセラーとなっている。作品は26言語に翻訳されており、ノンフィクション、小説、短編、詩、戯曲、ドキュメンタリー映画、児童文学、ラジオドラマなど、多岐にわたるジャンルで執筆活動を行っている。世界各国で配信された記事やエッセイも数百本にのぼる。日本で翻訳されている著書に『天使の本』(ジャパン・タイムズ)がある。
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老いることの驚きと幸せ これから年を重ねていくあなたへ、88歳の作家からの手紙
ソフィ・バーナム著
柴田 幸裕 訳
アスコム刊
「年を取るのってどんな感じ?」60歳の誕生日を目前にした59歳の女性が、80代の親戚女性である著者に、老いへの不安を感じながら、ふと、こんな質問をすることから始まります。その問いへのアンサーとして、作家が綴った1通の手紙がプロローグとなり、数珠繋ぎで続いていくみずみずしいメッセージ、「未送信の手紙集」です。
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