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【虎に翼】寅子(伊藤沙莉)を否定したり逆に負かされたりする役どころの松山ケンイチの表情が豊かで、笑いを与えてくれる

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田幸和歌子

【虎に翼】寅子(伊藤沙莉)を否定したり逆に負かされたりする役どころの松山ケンイチの表情が豊かで、笑いを与えてくれる

「虎に翼」第10回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。困難な時代に立ち向かう法曹たちの姿を描く「虎に翼」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

★前回はこちら★

【虎に翼】娘(伊藤沙莉)の背中を押す存在となる母(石田ゆり子)の意地。迫力の演技に魅せられた第1週

伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『虎に翼』の第2週「女三人寄ればかしましい?」が放送された。

弁護士を目指し、明律大学女子部法科に入学した寅子。クラスメイトも続々登場し、女性の社会進出どころか大学で学ぶことそのものにまだ逆風がある中、法を学んでいく。

朝ドラではある種の定番である、いわゆる「女学校編」に位置付けられるかもしれない。ヒロインの半生を描くことの多い朝ドラではヒロインが社会に出ていくまでの出会いや別れ、学び、友情、終盤までの重要な関わりとなる竹馬の友や恩師の存在……作品のテーマはそれぞれ違っても、青春ドラマのような雰囲気を醸し出すことも多い。

しかし「虎に翼」で描かれる大学女子部の空気はそれらのものとは根本的に違っていた。強烈な男社会の中で女子が法を学ぶということへの壁の高さ、大学女子部はそれを強く実感するための舞台として描かれている。

寅子たちの師である法学者の穂高重親(小林薫)こそ広い視点で女性が法の世界で活躍する未来を見守るが、若手裁判官の桂場等一郎(松山ケンイチ)には何度も「無理だ」と言われ(この物言いが母・はる(石田ゆり子)に火をつけたことが明律大に寅子が入学する決め手となるわけだが)、同じ法科の男子学生には女子部の学生は常にからかわれ、誇らしい気持ちで取材を受けた新聞には「変わり者」扱いで記事にされる。大きな期待が寄せられていた女性への弁護士資格を認める法改正も延期となってしまう。

女性が男性と同じように学び、社会で活躍することの難しさ。虎翼の女学生編には、青春ドラマ的な甘酸っぱさは存在せず、ひたすら現実を切り開く大変さと強く成長するさまが描かれている。それと並行して兄と結婚した親友による「結婚」という価値観を描いていくことも、視聴者と女性が社会に出て生きるうえでの「はて?」を、それも今もなお続く「はて?」をわかりやすく共有させてくれる演出だ。

そもそも法曹界という固い世界を舞台に、女性の自立、社会進出への道のりをテーマにするという、フェミニズム度の高いドラマである。「なんか難しそうだな」と敷居の高さを感じた視聴者も少なくなかったかもしれない。しかし、フェミニズムの物語はどストレートに打ち出しつつ、かつ、随所に散りばめられた笑いの要素は敷居の高さやテーマの難しさをやわらげ、本質に引き込まれる作りになっている。

家族の重要な局面も軽いノリや安請け合いでこなそうとする父・直言(岡部たかし)の存在が、その恐妻家ぶりも含めておかしい。しかし、それは法で守られている側(男性)ゆえ、戦う必要がない呑気さでもあるだろう(岡部たかしはちなみに前作「ブギウギ」の“アホのおっちゃん”役で、連続して視聴した人にとってはそれだけでなごむ配役でもある)。

法の先輩的立場から、寅子を否定したり逆に負かされたりする役どころの松山ケンイチの表情の豊かさも、寅子たちが直面する現実のシビアさを冷静に突きつけつつ、笑いを与える役割を果たしているように見える。

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