【光る君へ】夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介)の突然の訃報に呆然とする紫式部(吉高由里子)。藤原道長(柄本佑)との今後の結びつきは?
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志賀佳織
第30回「つながる言の葉」は宣孝を失ってからの日々が描かれていく。まひろが夫を亡くして3年目の寛弘元(1004)年の夏、都を干ばつが襲っていた。思いあまった道長はすでに隠居している安倍晴明(はるあきら/ユースケ・サンタマリア)に雨乞いをするよう頼む。「何かを差し出してくださらねば嫌でございます」という晴明に、道長は「私の寿命を10年やろう」と答える。引き受けた晴明の祈りが都の空に響くと、ようやく都に恵みの雨が降ってきた。
ききょうの『枕草子』はいよいよその人気が高くなり、宮廷中に読者が広がっていく。そしてまひろは、藤原公任(きんとう/町田啓太)の妻・敏子(としこ/柳生みゆ)の主催で、その屋敷である四条宮で月に一度開かれる和歌の会の指導を行っていた。あるとき、そこへひとりの女性がやってくる。後に和泉式部と呼ばれるようになる歌人・あかね(泉里香)だった。夫のいる身で東宮の弟と恋に落ちたりと、なかなか恋多き女性として知られていた。
そのあかねが、『枕草子』よりも、まひろが作って聞かせる『カササギ語り』のほうがはるかに面白いと告げる。『カササギ語り』は、カササギが人間の世界で見聞きした出来事を語る、という設定でその頃まひろが書いていた物語のことだ。女房たちに聞かせては、大変な好評を得ていたのだ。そういえば、前回の最後に、まひろが娘の賢子を膝に乗せ、『竹取物語』を聞かせてやる場面があった。漢籍には何の興味も示さなかった賢子が、母に続きをせがむような場面があったが、そんなこともいよいよまひろに「物語」を書かせるきっかけとなったのだろう。
一方、一条天皇は『枕草子』を読んでは定子の思い出に浸り、相変わらず彰子には関心を示さない。業を煮やした母・倫子は、夫・道長の尻を叩いて、内裏・清涼殿で一条天皇に直接会う機会を得る。「出過ぎたことと承知の上で申し上げます。どうかお上から中宮様のお目の向く先へお入りくださいませ。母の命をかけたお願いにございます」という倫子に驚いた天皇は、「そのようなことで命をかけずともよい」というと、その場を立ち去った。
妻の大胆不敵な振る舞いに、道長は思わず叱るが、「殿はいつも、私の気持ちはおわかりになりませぬゆえ」と倫子は言い捨てて立ち去るのだった。この夫婦、いつからか何だかすれ違い気味である。夫が頼りにならない分、ますます娘の身を案じる方向へ突っ走ってしまう妻を、黒木華がかすかな恐怖を醸し出して演じていて非常によい。道長は晴明に対策を相談するとこう告げられる。「今、あなた様のお心の中に浮かんでいる人に会いにお行きなさいませ。それこそが、あなた様を照らす光にございます」
そんな道長に、藤原行成(ゆきなり/渡辺大知)が書物が好きな一条天皇のために、『枕草子』を超えるおもしろい読み物を用意してはどうかとすすめてきた。公任から、妻の和歌の会でのまひろの指導ぶり、物語の書き手としての辣腕を聞いた道長には、ひとつ何かがひらめいた。
書き手としての評価が高まる一方で、まひろの生活は順調とばかりも言えなかった。ある日、賢子(福元愛悠)が、母の目を盗んで、書き上がった物語をろうそくの火を取って燃やしてしまったのだ。強く叱るまひろを為時がなだめるが、物語の紡ぎ手として優秀なまひろでも、子育てには頭を悩ませる出来事が絶えないのだった。そんなある日、まひろのもとに道長が訪れる。
まひろはいよいよ「物語を書く」という道に、運命によって押し出されていくが、それと同時に、やはり道長とのつながりがまた深まっていきそうな気配がしたこの2回。お互いの立場を助けるような、生かすような、「ソウルメイト」としての結びつきがますます深くなっていく予感のする展開だった。物語はいよいよ『源氏物語』の誕生へと移っていきそうだ。
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