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【光る君へ】まひろ(紫式部)の時代、平安女性の必修科目は3つ。「習字」「弦楽器の演奏」、あとひとつは?

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鷹橋 忍

平安時代の人たちは、どんな暮らしをしていたのでしょう。お姫さまは十二単?結婚観は?ウニはやはりごちそう?……NHK大河ドラマ「光る君へ」をみていると、知りたいことが次々にわいてきますね。作家 鷹橋 忍さんが、平安時代の暮らしについてひも解きます。第2回は、平安貴族の女子の教育と宮仕えについて。

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大河ドラマ『光る君へ』には、主人公・まひろ(紫式部)をはじめ、ファーストサマーウイカさんが演じるききょう(清少納言)、凰稀かなめさんが演じる赤染衛門(あかぞめえもん)など、宮仕えをする教養深い女性たちが登場します。

そこで、今回は平安貴族女性の教育と宮仕えについて、ご紹介したいと思います。

平安女性の必修科目とは?

当時の貴族女子の教育において、必修科目とされるのは、以下の三つです。
①習字
②弦楽器の演奏
③和歌

まず、①習字ですが、「文字は書き手のすべてを表す」と考えられ、文字が汚いと、教養はもちろん、人格まで疑われたといいます(川村祐子『平安女子の楽しい生活』)。
そういうわけですので、まさに習字は必修でした。

その練習方法ですが、今の習字と同じく、手本を写しました。
手本とした教材は、『古今和歌集』です。『古今和歌集』は、醍醐天皇の命により編纂され最初の勅撰和歌集です。

練習は、一文字一文字を放して書く「放ち書き」からはじめ、だんだんと切らずに続けて書く連綿体(続け文字)へと進んだといいます。

②の弦楽器ですが、『紫式部日記』によれば、紫式部も、箏(十三弦の琴)や和琴、琵琶などを嗜んでいたようです。ドラマのまひろも、琵琶を演奏していましたね。

③の和歌は、習字と同じく『古今和歌集』を手本に学んだといいます(川村裕子『はじめての王朝文化辞典』)。

これらは男子にとっても必修科目ですが、男子の場合はさらに漢籍(漢文形態の中国の書籍)の学習が加わります。

女性は主に仮名文字を読み書き

奈良時代から平安時代初期までは、漢字を借りる形で、日本語をあらわしていました。
日本語を書きあらわす独自の文字がなかったからです。

奈良時代の歌集『万葉集』も、すべて漢字で表記されています(以上、高木和子『源氏物語の作者を知っていますか』)。

紫式部が生きた平安時代中期には、漢字をくずしてできた仮名文字(おもに平仮名)による和文が発達し、紀貫之『土佐日記』など仮名文学も登場しています。

ですが、朝廷の公的文書をはじめ、男性貴族の間で交わされる書状や、男性が綴る日記も、すべて漢文で筆記されていました。

ゆえに、男子の教育には朝廷に仕える官人となった時に役立つ、漢籍の知識の習得が必要だったのです(服藤早苗 東海林亜矢子『紫式部を創った王朝人たち——家族、主・同僚、ライバル』所収 野田有紀子「第五章 紫式部の生育環境 ——受領・文人の娘として」)。

女子は主に仮名文字を読み書きし、仮名文字は「女手」と呼ばれました。

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