【虎に翼】実は遠くから見守っていた桂場(松山ケンイチ)。その仏頂面がどう変わっていくか、距離感は変わらずなのか
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田幸和歌子
寅子は、自分たちがすべきことは道の開拓ではなく舗装だと言った。この険しい道を、のちの女性たちが通りやすい、平坦で快適なものにしていくことだと。
その後、産休に入ることになった秋山に寅子は、
「あのとき自分がしてほしかったことをしているだけ。つまり、自分のためにやっているだけよ」
と言うものの、よねや轟(戸塚純貴)も同じように奔走しただろうし、意見書の提出先である最高裁事務総局には、桂場が話を通していたのである。決して寅子一人の手柄ではないし、寅子がすべてを進めたわけでもない。
秋山がいつでも戻れるよう、「あなたの居場所はここにちゃんとある。その選択肢があるって覚えていてほしい」と寅子は頼もしげに言った。実現した「居場所」は、確かにすごいことだが、それがどこか寅子のおかげのように描かれているところは少しだけ引っかかる。
家庭面で何かがあったときに、なんとなく寄り添ってくれている花江の存在だって寅子にとってなくてはならない存在であるはずなのに、やはり寅子のおかげのように進んでいくことも多いのが、旧来の朝ドラヒロインの悪い面が描かれているようにも感じてしまう。
そんななか、
「君が面倒を起こさぬよう根回しをしただけだ」
仏頂面で桂場は言うが、寅子と穂高の衝突の際も、常に苦言を呈しているようでいつも遠くから見守ってくれているのが桂場だ。そんな桂場のツンデレぶりはどこか愛おしい。
「わーお!」と満面の笑みで集まった旧知の面々と対面するライアン(沢村一樹)とのコントラストもまたいいバランスのコンビだ。終盤にかけても桂場の存在で前に進む事柄はきっと多いだろう、その先にこの仏頂面がどう変わっていくか、それともそのまま距離感は変わらずなのか、密かに注目していきたい部分である。
第23週では、これまで少しずつ進められてきた原爆裁判に、いよいよ本格的に突入することになる。どこか大河ドラマで描かれる歴史の転換点となる合戦や交渉のターンのような緊張感をはらみつつ幕を開けるこの裁判を、寅子は、よねは、どう向き合っていくのか。戦後の歴史上でも重要な意味をもつこの裁判で何が争われ、最終的にどう裁かれたのか。その意義も考えながら楽しみに放送を待ちたい。
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