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【虎に翼】星家の面々が昼ドラ的関係になったりしていかないか、要素てんこもりでつい「尺」が気になる21週

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田幸和歌子

【虎に翼】星家の面々が昼ドラ的関係になったりしていかないか、要素てんこもりでつい「尺」が気になる21週

「虎に翼」第104回より(C)NHK

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1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。困難な時代に立ち向かう法曹たちの姿を描く「虎に翼」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

★前回はこちら★
【虎に翼】実質プロポーズをしても、なんとなくスルーされる航一(岡田将生)がうっすら傷ついてそうでせつない

伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『虎に翼』の第21週「貞女は二夫に見えず?」が放送された。「貞女は二夫に見えず」とは、貞節な女性は亡夫に操を立て、二人の夫を持つことはしないという意味のことわざだ。亡夫・優三(仲野太賀)に永遠の愛を誓う寅子は、航一との関係をどうまとめていくのか。

寅子は、航一(岡田将生)からプロポーズされたものの、依然として「結婚」という制度そのものに疑問を抱き続けていた。

ふたりがあらためて考えるのは、「姓」をどうするかということだ。民法上、婚姻する二人のいずれか、夫または妻の名字を名乗ることが規定されている。「はて?」結婚するということは、そういうものなのか。佐田姓でなくなることは、戸籍上、法律上、優三との縁が切れてしまうということ。

言うまでもないが、寅子の旧姓は「猪爪」だ。思い出してほしい、独身時代の寅子は女性法曹家としてなかなか依頼を受けることができず、世間的信用を得るために優三との結婚に踏み切ったことを。その後「佐田寅子」として活躍の場を大きく広げてきた人物が、ある日を境に「星寅子」になってしまうのは、ある意味リスキーなことだ。芸能人や作家などが戸籍上改姓していても、仕事は旧姓のままであることは少なくないが、それに近い状況だろうか。

寅子と航一が直面する問題は、現在もなお検討が続く「選択的夫婦別姓」の問題と地続きのものだ。「選択的夫婦別姓」は「事実婚」とは法律上異なるものである。

「虎に翼」第101回より(C)NHK

寅子は自問自答するうち、大学生時代の寅子や法律家になりたての寅子など、それぞれの時代の5人の「寅子」が議論をはじめる。それぞれの時代を「はて?」と駆け抜けてきた歴代寅子の姿を見るうち、まだ何者でもないものの自分の中の正義を信じて一直線に突き進んできた寅子、そして家族や仲間たちとの時代がなんとなく思い出され、ついつい「ああ、女学生時代は女子部の『魔女5』との友情とか、花岡や轟、男子学生との掛け合い、そして穂高先生も考え方にズレがなかったなぁ、ワクワクしてたなぁ」など、懐古モードを引き起こされてしまったりもした。

「結婚」するということは、一体どのような意味を持つものなのだろうか。航一との結婚と並行して、轟(戸塚純貴)と〝恋人〟の遠藤(和田正人)の同性カップルの関係性が描かれていたのもまた、多様性の時代に法律や制度を根本から考えるきっかけを投げかけるようでもある。改姓以前に、法律上認められない同性婚問題はよりデリケートなものだ。そこを考慮せずに自分のことを主張する寅子には、若い頃の鈍感さとはまた異質でありつつも、やはり嫌な大人、偉い人になってしまったことを感じずにはいられない。

桂場(松山ケンイチ)に、戸籍上「星」姓となっても、仕事では「佐田」を名乗ることは可能か相談するが、司法の人間が、法律上の名前と異なる名前を名乗っていることを指摘する者が現れ、裁判の信憑性も損なわれることがあると、きっぱり言われる(裁判官が判決文などに旧姓を使用することが認められるようになったのは、2017年のこと)。

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