ジブリで人気を博した【井上あずみさん】「お尻丸出しの私をイケメン理学療法士さんが助けてくれました」脳出血で倒れても明るく生きるコツ
『となりのトトロ』など、ジブリ映画の挿入歌で知られる歌手の井上あずみさん。脳出血で倒れ、歌えなくなった日々を乗り越え、昨年はコンサートにも復帰。井上さん流のプラス思考を伺いました。
▼前編はこちら▼
>>デビュー40周年コンサート当日に脳出血で倒れるも、車椅子でステージに復帰。歌手【井上あずみさん】PROFILE
井上あずみさん 歌手
いのうえ・あずみ●1965年石川県生まれ。
21歳のとき『天空の城ラピュタ』の挿入歌「君をのせて」に抜擢され、その確かな歌唱力で一躍注目を集める。
2023年にはデビュー40周年記念アルバム『ジブリ名曲セレクション Dear GHIBLI Ⅱ』を発売。
ヒヤリとする話も笑い話に変えてしまう
ところが、リハビリはそう簡単には進まなかった。年が明けた24年元旦、トイレで転んでおでこにコブをつくった。
「体幹が弱くなっていたせいで、おしりをふこうとしたらそのままゴロンと落ちたんです。おしり丸出しの私を助けてくれたのが、イケメン理学療法士さんで……悲しすぎました(笑)」
ヒヤリとする話も、井上さんは笑い話に変えてしまう。ちなみに病院での書き初めで「たんこぶ」と書いて、「書道の先生に叱られました」と笑う。
努力のかいあって、2月初めには念願の退院。介護保険を使って、夫が自宅をバリアフリーに整えてくれていた。
「特にトイレは、ちょうどいい場所に手すりをつけてくれて完全に私仕様になりました。『マイルーム』と呼んでいます(笑)。外出先にもユニバーサルトイレはありますが、手すりの位置や便座の高さが数センチ違うだけで使いにくい。こういう不便さは、健康なときには気がつきませんでした」
週2回、高齢者に交じってデイサービスにも通っている。
「いろいろな人の人生に触れることができて、面白いんです。息子さん夫婦の愚痴や、『火垂るの墓』みたいな疎開体験を聞いたり。90歳の『マブダチ』もできました」
体力が回復するとともに、歌う力も取り戻していった井上さん。6月には術後初めて、故郷の金沢で恩師が主催するステージに車椅子で参加した。練習では出せなかった「まともな声」が出た。隣で歌っていた侑夕さんは驚き、涙をこぼした。
「石川の人たちに、逆に励まされました。能登半島地震を思えば、私の苦労なんて何てことはないなぁって」
そして11月には、1年前に予約していたホールで『アニソン文化祭2024』を開催することがかなった。しかし、井上さんが何曲も歌うことはできない。盟友である歌手の堀江美都子さんや、松本梨香さんらに声をかけると、依頼を快く引き受けてくれた。
「世代を超えて人気のアーティストがそろって、若い方も年配の方も喜んでくださいました。私自身『客席でじっくり観たい!』と思うステージでした」