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胃がんで亡くなった元夫。「終末期医療で大切なこと」とは?【内館牧子さん×吉永みち子さん対談】

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ゆうゆう編集部

「あなたはリベラル、私は保守派。それでも仲がいいって不思議よね」と、内館さん。性格も生き方も育った背景も違うのに、33年前に出会ってからずっと友達。

自分軸の終活をもっと考えていいと思う(内館さん)

吉永 そういえば私、うっかり連載の原稿を送り忘れて、ディナーショーを観に行っちゃったことがあったの。携帯を切っていたから編集部の電話に気づかなくて、家に着いたら警察と救急車と消防車がいました。

内館 警察? どうして?

吉永 事件性があるかもしれないからね。連絡がつかない場合、管理人さんやセキュリティ会社に警察が加わって、そのときの状況を確認すれば、事件性の有無はクリアできるみたい。

内館 ありがたいことよね。

吉永 無駄な出動をさせてしまって平謝りだったけど、勉強になった。今回は間違いですんだけれど、間違いじゃないことも十分ありえるわけで、改めて自分の年齢を考えさせられたわ。

内館 私ね、一般公募のエッセイや小説の審査員みたいなこともするんだけど、60歳以上の人の原稿って、明るくないのよ。

吉永 わかる気がするなぁ。

内館 年はとるし、体は弱るし、身近な人の葬式は増えるし、気分転換に雑誌を読むと終活特集だし、付録はエンディングノートだし(笑)。まだ死んでないんだから、煽るなって。

吉永 あははは。この対談だって終活がテーマだし(笑)。ま、死ぬ前にするから終活なんだしね。

内館 この前まで、男性週刊誌は裸の女性だらけだったでしょう? それが時代の流れもあって、自粛したんだと思う。そこに入り込んだ企画が終活なのよ。私はおっぱいが終活になっただけだと思ってるから。

吉永 確かに「終活とは何か」「何のためなのか」が、ちゃんと定義されないまま、ひとり歩きしている感じはするね。だから、とらえ方で全然違うことになっちゃったんだと思うよ。

内館 自分軸の終活、もっと考えていいと思う。

吉永 義務化されているわけじゃないから、やらない人はやらないよ。内館さん、遺言書とか書いてないよね。

内館 ヒェー! 考えたこともない。あなたと私、何で仲いいのかわからん(笑)。知り合いの男性がこの前亡くなったのだけど、すでにご両親も亡くなっているから公証人の立ち会いのもと、ちゃんとした遺言書も作成していたのよ。なのに、遺産をめぐって親戚がモメにモメて、絶縁状態。

吉永 正式な遺言書があるのにモメるんだ!

内館 そうよ。だからね、遺言書があってもなくても、モメる人はモメるのよ。

吉永 親戚間でいさかいが起きないように遺言書を作ったのに、気の毒だね。でも遺言書がなければもっと悲惨だったから、書いてよかったんだよ。

PROFILE
内館牧子さん 脚本家、作家

うちだて・まきこ●1948年秋田県生まれ、東京都育ち。
会社員生活を経て、88年に脚本家デビュー。
NHK朝の連続テレビ小説「ひらり」「私の青空」、同大河ドラマ「毛利元就」などの脚本を手がける。
2000年、女性初の日本相撲協会横綱審議委員に就任。

PROFILE
吉永みち子さん ノンフィクション作家

よしなが・みちこ●1950年埼玉県生まれ。
競馬専門紙の記者を経て、85年に『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
以降、数々のノンフィクション作品を発表。
テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。

『迷惑な終活』 1870円/講談社

年金暮らしの原夫妻は70代。妻の礼子はいわゆる終活に熱心だが、夫の英太は「生きているうちに死の準備はしない」という主義。そんな英太がある日、終活を思い立って始めたことは……。礼子をはじめ、登場する女たちそれぞれの「ケリのつけ方」があっぱれ。

▼後編に続きます▼

撮影/橋本 哲
取材・文/神 素子

※この記事は「ゆうゆう」2025年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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