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【財前直見さん・59歳】の終活「エンディングノートを書くのは大変」かわりにしたこととは?

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ゆうゆう編集部

終活ライフケアプランナーの資格をもつ財前直見さん。家族に伝えたい情報をひとつにまとめた「ありがとうファイル」を考案。日常でも非常時にも大いに役立つ財前流の終活とは?

PROFILE
財前直見さん 俳優

ざいぜん・なおみ●1966年、大分県生まれ。85年に俳優デビュー。
映画『天と地と』(90年)や、ドラマ「お水の花道」シリーズ、近年では「光る君へ」(NHK)など数々の作品で活躍。
2007年、大分に移住。その暮らしぶりを紹介する、「財前直見の暮らし彩彩」(NHK Eテレ)、「なおみ農園」(毎週木曜22時〜BS日テレにて放送中/TVer、Huluでも配信中)に出演。
インスタグラムでも発信中。

生きている今をサポートするツールに

41歳のとき、「息子を自然豊かな環境で育てたい」と故郷、大分に生活拠点を移した財前直見さん。同居する両親や近所の人たちが年を重ねるにつれ、「夫が亡くなって銀行口座が凍結された」「親が認知症。相続のことを聞こうにも聞けない」といった悩みを耳にすることが増え、“終活”の必要性を感じるようになったという。

「家族の病気や死は誰もが直面するのに、そのとき必要な手続きや問題の解決法を、私たち教わっていないんですよね。終活に関する知識を身につければ、私の家族のみならず、ご近所さんの悩み相談にも乗れる。役に立ちたいという思いから、50歳のとき“終活ライフケアプランナー”の資格を取得しました」

終活にはエンディングノートがつきものだが、財前さんは実際に自分も書こうとして、たびたびペンが止まったという。

「“棺に納めてほしいもの”とか、死にまつわる項目が多くて、私にはまだ想像できないんです。それに、エンディングノートに記してしまったら、遺言のように決定打になりそうで、躊躇しちゃいました」

50代の財前さんにはエンディングは遠すぎる。年を重ねれば状況も変わるだろう。もっと気軽にフレキシブルにできる方法はないかと、自ら考案したのが「ありがとうファイル」だ。

「私はもともとファイリングするのが好きで、出演した作品の写真や雑誌の切り抜きをファイルに入れていました。そこで思いついたんです。エンディングノートではなくファイルにしよう、と。一度書いたことでも、気が変わったら書き直して入れ替えられるし、追加もできる。それと、ノートに財産などの重要事項をいちいち書くのってめんどうですよね。ファイルなら、クレジットカードや通帳などをコピーしたものを入れておくこともできて、ラクなんです」

病院の診察券のコピーや、なんと現金もファイルにイン。

「今は元気でも、突然、交通事故や震災に遭う可能性だってあります。非常時に診察券や通帳を捜し出すのは大変な作業。そのとき、必要な情報がすべて入った一冊のファイルがあれば、原本がなくても問い合わせができます。現金は、スマホも電気も使えない事態に備えて入れておくと安心です」

非常時にも頼りになるファイル。財前さんは、ここに、ライフプランも入れている。

「年号と、両親、私、息子の年齢を記した年表を作成。○年には息子が大学に入るから、いくら必要、○年は父の米寿の祝い、と記入していくとお金の備えもできるし、今後何がやりたいかも見えてきます。未来に夢がもてて、楽しくなります」

家族のコミュニケーションツールとしても役立てている。

「両親の介護や延命治療などの希望は、インタビュー形式で私が質問して答えてもらい、聞き書きしました。最初は『小さい頃、どんな子どもだった?』から始まり、『宝物は?』『最期に何を食べたい?』と質問を投げかけていくと、今まで知らなかった親の人生や大切にしていることがわかってきて、温かい気持ちになりました。親の大事なものがわかれば、遺品整理のときも、これだけは残しておこうと悩まなくてすむと思います」

財前直見さんの「ありがとうファイル」の作り方

「ファイルを作成する本人も、それを見て死後の手続きをする遺族も『ありがとう』と思えるファイルです」(財前さん)。書籍『自分で作るありがとうファイル』(光文社)発売中。作り方は、40ポケット程度のA4サイズのクリアファイルを用意し、下記の要領で用紙を印刷して記入する。

手順① 特設サイトで書き込み用ファイルをダウンロード

パソコン、スマホ、タブレットでダウンロードが可能。下のQRコードを読み込むと「ありがとうファイル」の特設サイトが表示される。「ダウンロードページへ」をクリックする。その際に、カラーか黒一色かを選択する。カラーのほうが見やすくておすすめ。

ダウンロードはこちらから

手順② 必要な項目を必要な枚数だけプリントアウト

ライフプラン、親へのインタビューなど38項目の中から自分が必要だと思う項目だけをA4用紙に印刷する。自宅にプリンターがない場合は、ネットプリントアプリなどを利用してコンビニなどで印刷を。

手順③ 書けるところから書く。面倒なところはコピーでもOK

気楽に書けるところから着手して。クレジットカードや診察券など数が多くて書き写すのが面倒な場合は、カードを数枚並べてまとめてコピーすれば一目瞭然のリストができる。カードの裏側も忘れずに。

手順④ A4サイズのクリアファイルにどんどん入れていく

A4サイズのクリアファイルを用意し、書き終わったら項目別にクリアポケットに入れる。クリアファイルは100円ショップなどで販売されているシンプルなものでもOK。さらに入れるものが増えるようなら、クリアポケットを増やせるバインダー式がおすすめ。

▼後編に続きます▼

取材・文/村瀬素子

※この記事は「ゆうゆう」2025年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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