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【虎に翼】梅子(平岩紙)のおにぎりでやわらかな表情に変わるよね(土居志央梨)。素晴らしい小道具による伏線活用だった

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田幸和歌子

冒頭の「愛のコンサート」も大成功のうちに終了。ここで登場したのが、あの「梅子のおにぎり」だ。女子部時代、何度も寅子たちの心を潤してきた、あのおにぎりだ。そのおにぎりが、香淑(ヨンス)、よね(土居志央梨)の口にもそれぞれ運ばれる。戦争をはさみ、女子部の面々のその後の運命はバラバラになっていった。しかし、おにぎりを食べ、涙を流す香淑、少しやわらかな表情に変わるよねの姿に、いろいろなわだかまりが浄化されていくかのような、素晴らしい小道具による伏線活用だったのではないだろうか。

そしてもうひとつ。はる(石田ゆり子)の死後、ずっと一人で猪爪家の家事を支えつつも曇った顔、疲れた顔を見せて心配になっていた花江(森田望智)のことだ。道男(和田庵)との謎の仲の良さも息子たちも気がかりだったが、それを息子たちに話題にされたときに花江は大笑いする。不思議なことに道男と会うと、亡き夫・直道(上川周作)が夢に出てくるのだという。

「虎に翼」第65回より(C)NHK

花江もまた、梅子とは違う「解放」をのぞんだ。「手抜きをさせてください!」すべてをはるのように完璧にやろうと思ったが、自分には無理だったと。この正直な告白が、息子たちを含めた家族の距離をグッと縮めることになる。梅子も花江も、まったく違う内容ではあるが、これまでの「家庭」に縛られてきた環境から、もっと自由に生きていける女性という選択を教えてくれた。そして当面、あるいは近年まで長く続いた男性中心の社会の第一線でを女性が大手を振って歩いていくことで切り開く道を寅子がおそらくこの先見せてくれるはずだ。

とにかくいつも以上にエピソードと情報量が多く盛り込まれた週だったかもしれない。それゆえ、それぞれもう少し掘り下げられたのではという思いもなくはないが、ドロドロしたりギスギスしたりする内容も多かっただけに、りつ子の登場という「お祭り」感で視聴者を束の間驚きと歓迎ムードで包み込むことが必要だったのかもしれない。

さまざまな登場人物のわだかまりが解消され、ちょうど折り返し地点での節目らしい展開で幕を下ろした今週。後半戦のスタートだ。

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