【退職金のNGな使い方】60代以上が投資にまわす場合は?井戸美枝さんがアドバイス
イザというときの資金→普通預金、定期預金
病気や介護など、イザというときに備える資金は、必要なときにいつでも引き出せる預貯金に預けましょう。
老後の平均的な医療費は250万円、介護費は580万円が目安で、合計830万円です。
ただ、必ずこれだけ必要というわけではありません。イザというときに備えすぎて、老後を楽しむ余裕がなくなるのは本末転倒。加入している医療保険の保障なども考慮しながら、自分が「これだけあれば十分」と思い切れる額で備えるといいでしょう。
10年以内に使う生活費→定期預金、個人向け国債
退職後の生活費の赤字補てんとして10年以内に使うお金も、元本割れのリスクがない定期預金や個人向け国債に預けておくと安心です。
「生活費の不足分がいくら必要かわからない」という人は、簡単にキャッシュフローを予測してみましょう。
<例>
60歳でいったん退職し、65歳まで年収300万円で就労した場合。
生活費 300万円
夫の年金(65歳から) 170万円
妻の年金(65歳から) 80万円
この例でいうと、生活費が300万円として、働いて収入があるうちは収支トントンですが、65歳で仕事を辞めると、年間50万円の赤字が発生します。
60歳で退職したあとの10年間で、生活費の赤字補てんに必要な額は赤字50万円×5年間=250万円に。
10年以上使わないお金→投資へ
退職金や預貯金から10年以内に使うお金とイザというときの備えをとりおいて、残ったお金が投資にまわしてもいいお金です。
投資にまわしてもいいお金の計算例
<例>
退職金と預貯金(老後資金) 2000万円
60~70歳までに必要なお金
イベント費…家のリフォーム200万円 子どもの結婚祝100万円
医療介護費…830万円
生活費の赤字補てん…250万円
合計 1380万円
投資に回してもいいお金は
2000万円-1380万円=620万円
投資を始めるなら、利益が非課税になる「NISA」が有利です。
ただし、単位株などにまとまった額を投資するとリスクが高くなりがち。おすすめは、幅広い銘柄に分散投資してくれる投資信託です。「つみたて投資枠」を使って、毎月一定額を積み立てていくと、さらにリスクが分散されます。
退職金が出ると、取引先の金融機関から投資商品をすすめられることもよくありますが、勧められた商品=自分にとっておトクな商品とは限りません。うのみにせず、自分のペースで投資にまわす額を決めて、コツコツ運用していきましょう。