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【光る君へ】紫式部(吉高由里子)の旅立ち、藤原道長(柄本佑)の出家など波乱の展開。周明(松下洸平)と20年ぶりに再会するも、果たして二人は?

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志賀佳織

第45回「刀伊(とい)の入寇(にゅうこう)」

第46回「刀伊の入寇」は、寛仁三(1019)年春、まひろがいよいよ太宰府に到達したところから始まる。そしていきなり雑踏の中に、まひろはある人物の姿を認めて驚く。それは、あの越前で別れた周明(ぢょうみん/松下洸平)だった。

まひろの顔を見て逃げ出そうとする周明を「待って!」とまひろは呼び止める。「俺のことを恨んでないのか」「もう20年の年月が流れたのよ」「すまなかった」「無事でよかった」、そんな会話を交わした後、互いのこれまでを報告し合う二人。周明は、宋(そう)の一行と別れたのち故郷・対馬(つしま)に渡ったが、知る者はもう誰一人おらず、その後太宰府に戻り、通詞(つうじ)をしていたところ、宋からやってきた目の病に腕の立つ薬師(くすし)と出会い、再びその人物に学びながら薬師の仕事も始めたという。

大河ドラマ「光る君へ」第46回より ©️NHK

まひろは周明の案内で、太宰府の政庁へと赴く。そこでまひろは、戦いの訓練をする双寿丸(そうじゅまる/伊藤健太郎)と再会する。また、藤原隆家(たかいえ/竜星涼)にも引き合わされる。「そなたはもしや太皇太后様の女房、藤式部か」と尋ねる隆家に、「さようでございます」と答えるまひろ。「太閤(たいこう)様からそなたを丁重にもてなし、旅の安全を図るようにお達しがあった。俺達を追いやった『源氏の物語』を書いた女房をもてなせとは酷なお達しだわ」と苦笑する隆家に、まひろは顔を強張らせてうつむく。しかし、隆家は笑い飛ばし「長旅で疲れたであろう。まいれ」と招き入れて宋の国の「茶」でもてなす。

隆家は周明の師匠に目を治してもらったこと、目が治ったら、内裏で位を争っていた日々を実にくだらぬことだと思うようになったと言った。「ここには仲間がおる。平為賢(ためかた/神尾佑)は武者だが、信じるに足る仲間だ」とも。為賢も「隆家様は何事も自らの財を用いる身ぎれいなお方で」と言うと、「富なぞいらぬ。仲間がおれば」と、隆家も都にいるときから驚くような変わりぶりだ。

しかし、まひろはここで、隆家から衝撃の事実を知らされることになる。「太閤様はご出家あそばしたそうだな。知っていたか」「いえ……。旅立つ前はまだ」と呆然とするまひろ。「お体もかなり悪いらしい。いくら栄華を極めても病には勝てぬ。それが人の宿命だ。そなたには宿舎を用意する」「とんでもないことにございます!」「太閤様直々のお言いつけだ。遠慮するな」。道長の気遣いもさることながら、健康状態がよくないこと、出家したという事実にまひろは打ちのめされた。

その夜、周明に「太閤様とは誰だ」と聞かれる。そして「『源氏の物語』とは何だ」とも。「光る君と呼ばれる男の一生を描いた物語よ」と答えるまひろ。「隆家様たちを追いやったって」「そういうつもりで書いたものではないわ。でも物語が人を動かすこともあるやもしれない」「お前の物語は人を動かしたのか」。黙ってしまったまひろは月を見上げる。すると、遠い都では道長も同じ月を見上げていた。

その後、松浦に旅立つことを決めたまひろに、周明は「船越の津まで送っていこう」と申し出る。しかし、その頃、政庁に壱岐(いき)から常覚(じょうかく)という僧侶が隆家を訪ねてくる。そして、「3月の末、どこの者とも知れぬ賊が襲来、壱岐の子どもと年寄りはすべて殺され、あとは連れ去られました」と告げる。刀伊の入寇と呼ばれるできごとである。女真(じょしん)の一派と見られる集団を主体とした海賊が壱岐、対馬を襲い、さらに九州にも侵攻した事件だ。隆家は、博多に軍勢を集め、敵を能古島(のこのしま)まで追い返したが、次に敵が攻めてくるのは「船越の津」あたりだろうと予測。博多にも兵を残しつつ、船越にも向かうように進めた。

大河ドラマ「光る君へ」第46回より ©️NHK

まひろたちは、雨の降る中、旅の途中の一夜をある小屋で過ごす。周明は「今の太閤はお前の想い人か。なぜ妻になれなかったのか」と尋ねる。「あの人は私に書くことを与えてくれたの。書いたものが大勢に読まれる喜びを与えてくれた。私が私であることの意味を与えてくれたのよ」と答えるまひろ。「ならば、なぜ都を出たのだ」と周明。「偉くなって世を変えてとあの人に言ったのは私なのに、本当に偉くなったら虚しくなってしまったの。そういうことを思う己も嫌になって、都を出ようと思ったの」「それだけ慕っていたのだな」「でも離れたかった」「捨てたか捨てられたのかもわからないのか。そんなことをしていたら、俺みたいな本当の一人ぼっちになってしまうぞ」「もう私には何もないもの。これ以上あの人の役に立つことは何もないし、都には私の居場所もない。今は何かを書く気力も湧かない。私はもう終わってしまったの。終わってしまったのに、それが認められないの」

そう涙するまひろ。そうか、都を出たいと思った背景には、そんな悩みがあったのかと改めて思わされる。しかし、ここで周明が発する一言が力強く、心憎い。

「まだ命はあるんだ。これから違う生き方だってできる」。まひろはそれでもこう反発する。「書くことが全てだったの。違う生き方なんてできないわ」。周明はまひろに前を向かせようとあれこれ提案を続ける。「俺のことを書くのはどうだ」「お前がこれまでやってきたことを書き残すのはどうだ」「そういうものを書いている間によい物語が思い浮かぶかもしれない。書くことはどこでもできる。紙と筆と墨があれば」

なんていい人なんだ。なんていい友達なんだ。一周回ってこういう関係になれた二人がとっても爽やかで感動的だ。その言葉に初めて顔が明るくなるまひろ。「どこででも?」「都でなくても」「そうね」。いびきをかく乙丸を見て、二人は笑い合った。

翌日、船越の津での別れ際、周明はこうまひろに言う。「松浦に行って思いを果たしたら、必ず太宰府に戻ってきてくれ。そのときに話したいことがある」。まひろも頷いた。しかし、その直後、浜辺で叫び声が聞こえて、村人たちが慌てて逃げてくる。刀を持った賊が押しかけてくる中、逃げ惑う周明とまひろたち。戦う者の中には双寿丸もいた。そのとき、倒れたまひろを起こそうと手を差し伸べた周明の左胸を矢が貫く。果たして二人は──。

大河ドラマ「光る君へ」第46回より ©️NHK

まさかの周明再登場に、視聴者としてはワクワクした展開だったが、「話したいことがある」の続きがついに聞けなくなってしまいそうで、とても切ない。あと2回でどのような結末に至るのか、まだまだわからなくなってきた。SNSで吉高由里子曰く「物凄い勢いで物語が進んでいくので、しっかり捕まってくださいな」とのこと。ドキドキハラハラしながら見守っていこう。

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