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【べらぼう】田沼意次(渡辺謙)が進めている蝦夷地を天領とする計画とは?

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鷹橋 忍

松前藩とロシアの関係は?

松前道廣の治世下では、巨大な帝国へと成長したロシアの進出が問題となってきます。安永7年(1778)6月、ロシア人のシャバーリンら一行を乗せたナタリア号が蝦夷地のノッカマプ(野付半島)沖に到着し、通訳を介して、松前藩士の新井田大八らに交易を求めました。

新井田大八らは、「自分たちの一存では決められない。松前に帰って、藩主に報告する」と応じ、翌夏にエトロフ島での再会を約束して、松前藩に戻っています。

松前道廣は家臣たちと協議のうえ、通商を拒否することを決定します。「たぶん幕府は長崎以外、異国との交易は認めないだろう」というのが、その理由です。

翌安永8年(1779)8月、ロシアのシャバーリンらは再び、来航しました。松前藩側は、異国との交易の場は長崎に限られていることを伝えると、シャバーリンら一行は引き下がり、帰国の途についています。

このロシアとの一連の出来事を、松前藩は幕府に報告しませんでした。幕府が、藩の蝦夷地支配に介入するのを防ぐためだったといわれます(賀川隆行『日本の歴史⑭ 崩れゆく鎖国』)。ですが、ロシアの蝦夷地接近は、ある書物がきっかけとなり、幕府に知られてしまうことになります。その書物とは、ドラマにも登場した『赤蝦夷風説考(あかえぞふうせつこう)』(上下2巻)です。

【べらぼう】田沼意次(渡辺謙)が進めている蝦夷地を天領とする計画とは?(画像3)

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第22回より ©NHK

蝦夷地を天領に?

『赤蝦夷風説考』を著したのは、おかやまはじめさんが演じる仙台藩医・工藤平助です。「赤蝦夷」は、カムチャッカ、もしくはロシアを指します。

下巻は天明元年(1781)に、上巻は天明3年(1783)年にそれぞれ脱稿と、下巻のほうが先に書かれています。上巻のテーマはロシア貿易と蝦夷地の開発、下巻のテーマはロシアの歴史や地理でした。

工藤平助が、吉沢悠さんが演じる勘定奉行の松本秀持(ひでもち/田沼意次の腹心)に提出し、渡辺謙さんが演じる田沼意次(おきつぐ)に渡されました。

『赤蝦夷風説考』には、ロシアが日本との交易を望んで、根室付近にやってきていること。すでに、ロシアとの抜け荷(密貿易)が横行している可能性があること。これを放任するくらいなら、幕府も蝦夷地の金銀を発掘し、ロシアと通商したほうがよいとの提言なども記されていました。

『赤蝦夷風説考』を読んだ田沼意次は、ロシアとの貿易と蝦夷地の開発を目指し、天明5年(1785)2月、蝦夷地へ調査団を送りました。このとき田沼政権は、松前藩を改易に追い込み、蝦夷地を幕府の天領とするところまで視野に入れていたとも推定されています(秦新二 竹之下誠一『田沼意次・意知父子を誰が消し去った? 海外文書で浮かび上がる人物』)。

なお、ドラマでは、田沼意次の嫡男・宮沢氷魚さんが演じる田沼意知(おきとも)が、誰袖と組んで松前藩に陰謀を仕掛けていますが、史料があまり残っていないため、意知に関してわかっていることは少ないのです。

また、誰袖を身請けするのは意知ではなく、栁俊太郎さんが演じる土山宗次郎です。土山宗次郎は勘定奉行・松本秀持の配下で、勘定組頭(くみがしら)を務めています。

土山宗次郎は悲劇的な最期を迎えるのですが、ドラマではどう描かれるでしょうか。

【べらぼう】田沼意次(渡辺謙)が進めている蝦夷地を天領とする計画とは?(画像4)

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第22回より ©NHK

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