【光る君へ】4年ぶりに再会するも、言葉をかわすことのない紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)。それぞれに進む道で志は空回り
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志賀佳織
第14回「星落ちてなお」。星すなわち藤原兼家にもいよいよ最期のときが近づいてきた。永祚2(990)年5月、兼家は3人の息子たちを集め、自分は出家すると告げる。そして後継者に長男の道隆を指名する。しかし激怒したのが、これまで政変などの影の立役者として父に尽くしてきた藤原道兼(玉置玲央)だ。「父上は正気を失っておられる。父上の今日あるは、私の働きがあってこそ。何ゆえ兄上に」と激昂する。
しかし父は容赦なくこう言い捨てる。「正気を失っておるのはお前のほうだ。お前のような人殺しに、一族の長が務まると思うのか。道兼はこれからも我家の汚れ仕事を担って兄を支えて参れ。それが嫌なら身分を捨て、どこへでも流れていくがよい」
道兼が叫ぶ、「この老いぼれが。とっとと死ね!」。権力者の父は、あくまでも冷徹だった。彼にとって何より大事なのは「家」だということなのだろう。「家」を守るに、それぞれの役割に徹せよということなのか。
道兼は以降、内裏に参上しなくなり、ややあって兼家は東三条殿の庭で倒れたまま絶命しているところを道長に発見される。前夜、安倍晴明(はるあきら/ユースケ・サンタマリア)は夜空を見上げつつ、こうつぶやいていた。「今宵、星は落ちる。次なる者も長くはあるまい」。父の喪中にもかかわらず酒宴に興じていた道兼のもとを、愛想をつかした妻と子が去っていった。
兼家に代わり摂政についた道隆は、弱冠17歳の長男・藤原伊周(これちか/三浦翔平)を一足飛びに蔵人頭に引き立てた。周りの目は厳しい。我が世の春をほしいままにしていく道隆の中関白家。その中関白家で開かれた「和歌の会」で、まひろは、久しぶりにききょう(後の清少納言/ファーストサマーウイカ)と会う。後日まひろの屋敷を訪ねてきたききょうは、自分のために生きるために、夫も息子も捨て、宮中に女房として出仕したいと語る。まひろは圧倒されるのだった。
やっと志の片鱗を見つけたと思っていたまひろだったが、たねの両親に娘に文字を教えることを断られてしまう。「俺ら、あんたらお偉方の慰みものじゃねえ」。一方、道長も政の場面で、まひろと約束した世の中をつくるべく、「下々の者たちへも目をむけるべし」とたびたび提言するも、却下される。
貴族とは何か、自分たちがつくらなければいけない世の中とは何か、そんな思いをともに抱えるまひろと道長。志が空回りしかけるも、ソウルメイトとしてのつながりは、決して切れはしないのだと思わせられるそんな2話だった。「次の星」のあとの「星」になるであろう道長の思いと「私らしい」道を探すまひろに、ここからまた新たな運命が始まっていく予感がする。