【虎に翼】“強い女子”という単純さで描かれていない点にも、この作品が開拓者的な存在になりうる予感がする
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田幸和歌子
寅子の兄の妻・花江(森田望智)も、学生である寅子たちとの対比が際立つ存在だ。猪爪家を訪れたクラスメートに女中と勘違いされ、「私なんて女中みたいなもの」と自虐混じりに嘆く。寅子の親友なのに、旧来の家庭での「妻」という立場により、学生である寅子たちと分断されている。嫁姑もまたひとつの対比だ。味付けひとつとっても、姑のはる(石田ゆり子)に認めてもらえないことに悩む。生理で悩む寅子と、交互にため息をつくカットが差し込まれるところも、お互いに分かりえない悩みを抱えて生きていることが明示され、実に上手い。
寅子とクラスメートたちは本音をぶつけあい、やがてそれぞれの痛みや苦しみを理解し合っていく。かたくなだったよねも、「この人は家事や育児をしながら学んでいる」「この人は国を離れて言葉の壁もある」「この人は常に行動を見張られて自由もなく、いろんなものに縛られて生きている」「誰よりも授業を熱心に聞いているのに、月のものが重くて授業を休まないといけない」と、みんな恵まれて生ぬるいと言いつつ、認めている変化が見てとれ、胸アツだ。
しかし、絆が生まれてきている寅子たちの姿に、「ひとりぼっちだなって……」と涙を流す花江。無意識に「兄の嫁」と寅子に紹介され、「戦わない女」なんだと悲しむ。しかし、そんな花江も寅子たちに触発され、「お母様が褒めてくれないのが嫌」と打ち明ける。実際にこの時代には今よりもっと本音をさらけだすのが難しかったろうし、言語化されず、無意識の底にあったのだろう。
そんな男女差だけでなく、同じ女性、同じクラスメートでもいろいろな違いがあり、分かり合えない部分があること、言わないと分かり合えない部分があることを物語に乗せ届けてくれた。「強い女子」「戦う女子」という単純さで描かれていない点にも、この作品自体が開拓者的な存在になりうる予感がする。
寅子たちは女子部を卒業、いよいよ男子学生と机を並べ、さらに本格的に法律を学んでいくこととなる。
大学に向かう寅子たち5人が横一列に並び歩く姿の力強さ。それはどこか集団ヒーロー物のような頼もしさのようであり、新たな戦いの幕開けを感じさせられるものだった。