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人生後半戦の『ターニングポイント』を前向きに!

映画史上最高齢の“お尋ね者”を演じた草笛光子さん。「これから先の人生は、アンジーみたいにわがままに生きようと思っています」【草笛光子さんのターニングポイント#2】

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藤岡眞澄

50代は「新しいことに挑戦してみるのもいい時期じゃないかしら」

そんな草笛さん自身にとって、アンジーのように心を前に向かせてくれた存在はいたのだろうか?

「昔、パーソナルトレーナーから『草笛さんはお金はないけど、人には恵まれているね』と言われたことがありますが、振り返ればいくつもの人生のターニングポイントとなる時に、引っ張り上げてくれたり、背中を押してくれた方が必ずいました。出口のない様な真っ暗なところに、スッと光がさすように言葉をくれる方がいらして、今があるなと思います」

若くして、当時の日本では馴染みの薄かったミュージカルの舞台に立ち始めた草笛さん。ときには、自ら企画した一夜限りの公演で、貯金通帳の残高が花と散ったこともあったとか。それでも、ミュージカル女優の道を歩み続けてきた。

そんな中、ひとつの転機が訪れる。舞台美術家の朝倉摂さんから、「こういうのもやりなさいよ」と持ちかけられたのが、舞台『わたしはシャーリー・ヴァレンタイン』だ。

「私の50代は一人芝居という新たなジャンルに挑戦した頃でした。

それまでミュージカルばかりやっていたので、歌も踊りもない、一人でしゃべりっぱなしのお芝居に二の足を踏んでいたら、朝倉先生から『あなたはまだ新人でしょう。これからの女優なんだから、できないなんて言っている場合じゃないのよ』と叱咤激励されました。

先生の“新人”という言葉にハッとしたんですよ。そうだ、私はまだ新人なんだって思って飛び込んだんです。

この舞台をやっていなかったら、今の私はいないと思うくらいのターニングポイントでした」

その結果、舞台『シャーリー・ヴァレンタイン』は、草笛さん58歳から63歳までの間に延べ185回ほどの再演を重ねることになる。

「私の50代は一人芝居という新たなジャンルに挑戦した頃でした」

その後、草笛さんのライフワークとも言える舞台『6週間のダンスレッスン』などの舞台美術も手掛けた朝倉さんは、草笛さんにとって“演劇界の母”とも言える存在なのかもしれない、

「今は、人生100年なんて言われますから、50代はちょうど真ん中。50年も生きて来たけど、まだ50年あるんです。

しかも、大人の50年ね。そう考えたら、当時の私よりも50代はまだ“新人”ですよ。

偉そうに言えないけれど、新しいことに挑戦してみるのもいい時期なんじゃないかしら」

91歳にして2作目の単独主演。しかも、アンジーという「映画史上最高齢の“お尋ね者”」にチャレンジした草笛さんの発する言葉に、思わず背筋が伸びる。

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