広い一軒家から45㎡の賃貸マンションへ。人生後半戦、住まいのダウンサイジングは正解だった?【広瀬裕子さんのターニングポイント#2】
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ゆうゆうtime編集部
家具を減らし、持ち物もコンパクト化したら「いいこと」ばかりです
―コンパクトな住まいでの暮らしで、持ち物にも変化があったようですね。
3人掛けの大きなソファ以外は、以前使っていた家具を自分なりにうまく収めて1年ほど暮らしていたんです。でも、体調が悪いときにぶつかったり、手をついたらぐらついたりということがあって減らすことにしました。
気に入っていたものを手放すのはどんなときも迷いますが、これからの自分の暮らしに合うのであれば、気持ちを切り替えたほうがいい。そう考えて、「軽やかさ」のほうを選びました。
―「布団生活」も始まりましたよね。
処分するのが大変そうと50代半ばでベッドを手放して、布団が置けるサイズの台をつくってもらい、以来、その寝台の上で寝る生活を続けていました。でも、1/3の広さになった今の住まいに寝台を置くのは少し無理がありました。
布団生活になって、限られたスペースを広く使えること、布団の上げ下げで気持ちの切り替えができること、洗える布団にしたので清潔でいられることが気に入っています。
―「寝たいときにすぐに寝られない」というデメリットも、「昼寝をしなくなった」とポジティブにとらえていらっしゃいました(笑)。
日中、布団を出してまで寝たいかといえばそこまでしてという気持ちになります(笑)。先日、新しい寝具を購入したのですが、「眠り」についてもう少しきちんと考えようと思うきっかけになりました。
新調したのは、以前、季節ごとに滞在していた京都の「俵屋旅館」さんのシーツと枕カバーです。オンラインショップで購入できると知り、デイリーに使えるコットン製のものを選びました。これからの自分の年齢に合わせて、健康になるとまではいかなくても、心身がいい状態でいられるものを選んでいきたいですね。
―住まいに合わせて“コンパクト化”したものが、ほかにもいろいろあるそうですね。
一軒家の広いキッチンからコンパクトなキッチンに変わり、収納や使い方など、すべてに見直しが必要でした。もともと自分の手の大きさに合わせて半分にカットして使っていた食器洗い用のスポンジは、さらに半分にカットして1/4のサイズに。調味料もコンパクトなものや小分けのものに変えました。
飲む回数が減ってきたこともあり、コーヒーもドリップバックに。持っていたコーヒー関連の器具を手放し、そのスペースが空きました。家の中のものをコンパクトにすると、スペースに余裕が生まれるだけでなく、使いやすい、新鮮、使い切れる、破棄しないと、「いいこと」がほとんどです。
―この先の住まいについて考えていることはありますか?
一時期は住まいを購入することも考えましたが、しばらくは賃貸でと思っています。近々に引っ越す予定もありませんが、不動産情報をチェックするのが好きなので、毎日ネットで見います。UR賃貸住宅やNPO法人が運営する高齢者住宅の情報などもよく見ているんですよ。
今後、別の住まいに移ることがあっても、広さは今と同じがいいと思っています。コンパクトでも居心地がよくて、気に入ったものがある住まいなら、暮らすこと、生きること、歳を重ねることそのものが愛おしく感じられる気がします。
広瀬さんのターニングポイント②
「東京への移住を機に住まいをダウンサイジングしたら、掃除が楽になり光熱費もダウン。人生後半の住まいはコンパクトなほうがいいと実感しました」

60歳からあたらしい私
広瀬裕子(著)
扶桑社(刊)
60歳はあたらしいスタートラインととらえ、小さな暮らし、グレイヘア、家族の看取りなどをていねいに綴ったエッセイ集。夕食の食べ方を変えたり、布団生活をはじめたりと、今の年齢と住まいに合わせた試行錯誤の数々にも共感を覚える読者が多数。
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撮影/加藤新作 取材・文/志賀朝子
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