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「善人よりも意地が悪い人のほうが好き」【西條奈加さん最新作】60代の女子が大活躍する話題の時代小説『姥玉みっつ』

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ゆうゆう編集部

善人よりも少し意地悪が好き。個性って欠点に出るから

時代小説作家として人気の西條さんだが、もともと時代小説にはあまり興味がなかった。それを変えたのが、宮部みゆき作品だった。

「時代小説イコール、剣で闘う男の物語と思い込んでいて、疲れそうだなって。でも宮部さんの時代小説は全然違って、ものすごく面白かった。時代小説マニアの友達にそれを話したら、え?こんなに?って思うほど貸してくれて(笑)。1年かけて片っ端から読みました」

その体験がデビュー作『金春屋ゴメス』を書くきっかけになった。

「江戸時代の町の仕組みや生活スタイルを知ると、新鮮で興味深いなぁって感じます。私は北海道出身なので、古い宿場町や城下町とは縁がなかったんです。東京で暮らし始めると、江戸時代の地名がそのまま残っている場所がたくさんあったり、『このへんには20年くらい前まで長屋があったんだよ』と聞いたり。江戸時代は切り離された過去ではなく、現代と地続きなんですよね」

原稿を書くとき、西條さんは江戸期後半の古地図を広げ、物語の主人公たちの生活を思い浮かべる。この道を歩くと、どんな風景が広がるのだろうか、と思いながら。

「私は文化・文政の時代(1800年代前半)が大好きなんです。飢饉もなく人々は豊か。文化が花開いた時代です。女の子も読み書きを習い、趣味も楽しんでいました」

しかしその少しあとには、天保の大飢饉や黒船襲来、明治維新の嵐が来ることを私たちは知っている。

「平和だから、市井の人たちの日常を描くことができる。働けば収入があり、文化を味わえるのは平和だからこそ。それは現代も同じ。それでも、物語に出てくるお萩ちゃんのようにつらい目にあう子もいます。それも今の時代と変わりません」

時代小説だからと構えず、軽い気持ちで読んでほしいと西條さん。

「私は善人よりも少し底意地が悪い人のほうが好きなんです(笑)。人の個性って欠点から出てくるものだと思うので、『こんな人、いるいる』って思いながら楽しんでください」

撮影/富本真之

PROFILE
西條奈加

さいじょう・なか●1964年北海道生まれ。
2005年『金春屋ゴメス』で日本ファンタジーノベル大賞、12年『涅槃の雪』で中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で直木賞受賞。

※この記事は「ゆうゆう」2024年6月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


取材・文/神 素子

ゆうゆう2024年6月号

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