『あさイチ』の朝ドラ受けで花丸大吉に「まさかワインリストがある店だとは」といじられていたシーンとは?【おむすび】
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田幸和歌子
第1話のようにセルフツッコミする場面では?
かつて夢をあきらめたサッチン(山本舞香)や、栄養失調で倒れたスズリン(岡本夏美)を引き合いに出し、みんな元気になって好きなことを貫いて生きている。だから、「好きなことやろうよ。そのためにもしっかりご飯食べて、必要な栄養量とって健康になろう」(ギャルマインドだ)ということで説得に成功、麻利絵の頑な心もほどけ、食事をきちんと摂り「おいしい」と言えるようになった。母娘の関係も無事改善したよう。
それを、
「たいしたもんや(パチパチ)」
「グッジョブ!」
そして糖尿病で入院していた八重子(徳田尚美)が無事退院となったときも、
「結ちゃんのおかげよ」
と称賛と感謝の嵐である。このあまりにも典型的朝ドラヒロインである演出、これこそ1話と同じように「ウチは朝ドラのヒロインか?」とセルフツッコミをするべき場面ではなかっただろうか。
しかしその数日後、八重子に膵臓の腫瘍があり、緊急搬送される急展開が訪れる。
「米田も食事療法しててなんにも気づかなかったの!?」
と医師の蒲田(中村アン)に強めの口調で言われてショックを受ける結。
患者の夫にも「言いましたよね、しっかり食事療法すれば元気でいられるって」と責められるが、そこは夫がそれほど気が動転していたということでまあいいだろう。
担当医と看護師には「ちびるほど説教した」と蒲田医師は言っていたが、もともと糖尿病患者として、そのための食事管理を担当するのが管理栄養士の仕事と思われるので、気づけというよりも、膵臓にも疾患が見つかったので何か考えてくれというものではないのだろうか。
「気づかなかったの」と言われても、肝臓と同じく膵臓も病気の発見が医師でもなかなか難しく「沈黙の臓器」と呼ばれる臓器のひとつであることは、自分でも知っているぐらいだ。管理栄養士に気づけというのはシビアな話ではないだろうかという印象を受けた。おそらくそこまでは管理栄養士には責任はないはずなので、落ち込むのは少し不思議な気もする。
そんな気持ちを救ってくれたのが、娘の花(宮崎莉里沙)が、
「食べり」
と、自分でにぎったおむすびを母に差し出したことだ。
「美味しいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるやろ」
かつてと「米田家の呪い」と称したDNAは、ちゃんと受け継がれている。これもまた、親子というものを感じさせられるいいシーンである。
このドラマに関しては、SNSなどでよく「雑」「浅い」という意見をよく見る。たしかにときにはダイジェスト?と思うような駆け足展開を感じることもある。しかし、実は描くべき要素、盛り込みたい要素が多すぎるのではないかという印象を受ける。この週もここには書ききれなかったが、理容師を目指す翔也(佐野勇斗)や、聖人の体調の違和感など、さまざまなエピソードが盛り込まれていた。
しかし、この週に限らず2つの大震災など、それぞれがあっさりと処理され、ときにはナレーションでスキップさせてしまっていることがそういった評価につながってきたのではないだろうか(個人的には全く描かれない糸島の祖父母の近況も気になるが、これも尺に収め切れない要素のひとつではないか)。
ドラマの配分とは、なかなか難しいものだ。そのバランス管理を考える人も必要なのかもしれない。そんなことをあらためて感じた第19週だった。
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