70代で天職に出合った77歳女性。59歳で整体師→71歳で画家に【人生100年時代の働き方白書】
初作品が入選! 海外の展覧会でも高評価
帯に描いた初作品は「岩手芸術祭」で入選。その後、着物を切り刻んだ布片を絵の具代わりに貼りつけるリボーンアートを生み出す。モチーフはなし。下描きもなし。「心に浮かんだものを心の赴くままに描き」「観る人に自由に解釈してもらう」のが杉山さん流だ。
「未経験から始めた自分の作品を先入観なく評価してくれるのでは」と、海外の難関コンテストにも挑戦し、次々と入賞・入選を果たす。多くの人から「元気をもらえる」「思わず立ち止まる」とうれしい声が寄せられ、「龍安寺の石庭に匹敵する精神性の高さ」と評価してくれた専門家もいた。
「デッサンの勉強をしていないのに、どうしてこんなにバランスのいい絵が描けるの?と聞かれたことがありました。整体師として人の体を見て、触って、毎日バランスを見ているから、というのがその答えじゃないかなと思います」
杉山さんには忘れられない「お辞儀」があるという。発達障害のある高校生の患者さんが杉山さんの作品にじっと見入り、「僕の絵の先生になってください」と、深々とお辞儀をした。
「その美しさに、かれてしまったと思っていた涙が止まらなくなりました。それまでは展覧会に出して認められることを目標にしていたけれど、『違う』と気がつきました。アートの力で、障害のある人や自分らしく生きられないでいる人が自立できる場をつくりたい。そんな新しい目標ができました。そのために私は、作品をお金に換えられる画家にならないと。世界中の人たちにもっともっと私の作品を観ていただきたいんです」
食事がいただけること、澄んだ空気の中で呼吸ができること、そんな、当たり前と見過ごしてしまうことに感謝を忘れないというのが杉山さんの信条。一からの再出発を強いられた離婚もパワーに変え「天職」を得た杉山さんは、絵を描けることに感謝しながら、世界を見据えて挑戦を続けている。
下絵はなし。心の赴くままに素材を貼りつけて
着物の他、包装紙などあらゆるものが絵の具代わり。心に湧いたイメージに従いスプレーのりで貼りつけていく。
撮影/柴田和宜(主婦の友社)
取材・文/志賀朝子
※この記事は「ゆうゆう」2025年4月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
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