「フリーマーケットで子供服を売ってお小遣いに…」役者の夫との結婚。父に問われた幸せの本質とは?【赤間麻里子さんのターニングポイント#5】
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佐藤望美
TikTokで公開されたショートドラマをきっかけに遅咲きのブレイクを果たした女優・赤間麻里子さん。朝ドラをはじめ、活躍の場を大きく広げています。第5回は、生きていく上での赤間さんの価値観や今後についてお話しいただきました。
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PROFILE
あかま まりこ●1970年8月26日生まれ、神奈川県出身。女優。主な出演作にドラマKTV『アンメット』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』、TBS『海に眠るダイヤモンド』、映画『わが母の記』『ヘルドッグス』など。クリエイター集団【こねこフィルム】の作品「年齢確認」では、コンビニを舞台に年齢を確認され、妙齢女性をコミカルに演じ多くのファンを魅了、そのシリーズの総再生回数は2億回を超える。映画『うぉっしゅ』が5/2より新宿ピカデリー他全国公開、『仏師』2027年春公開予定。
夫が初めて実家に来た日、父に言われた言葉とは?
−赤間さんは「無名塾」の先輩俳優・髙川裕也さんと28歳で結婚されています。役者同士の結婚について、ご両親の反応は?
相当心配していたとは思います。夫が実家に初めて挨拶に来たとき、「これは最初で最後、1度しか聞きませんけれども、収入はおいくらですか」と父は尋ねていました。当時、役者としての収入プラス、アルバイト。帰ったあと、父が私に言った言葉は忘れられません。「あなたが選んだ人だから反対する気持ちはない。だけど、将来に友達が旦那さんに海外旅行へ連れて行ってもらったり、一軒家を建ててもらったり、そこへ遊びに行って素敵な器で素敵な料理が出てきたりしたら、私もこうしたかったと思うかもしれないよ。そんな生活が羨ましくなるかもと今の時点で少しでも思うなら、恋愛の間にやめておきなさい」と。
−この結婚に対する、赤間さんの覚悟を確認されたのですね。
私はそこに価値を見出していなかったので、「そういうことで人をうらやむことはない」ときっぱり言いました。すると「じゃあ、いいんじゃないですか」と父は許してくれました。役者同士で、私がもし役者を辞めずに続けたいなら双方が苦労する事になる。でも収入が安定したサラリーマンと結婚すれば、好きな役者を続けられてなおかつ、素敵な家にも住める。昭和の時代の親ですからね、結婚する相手の生活能力は大切だと思っていたでしょうし、周囲を羨む気持ちと物質的な豊さを求める気持ちがあるのかどうか、どちらも確認したかったのでしょうね。私が求めている幸せはどういうものなのか、何が豊かだと思うのか。
公園でサイズアウトした子ども服を売る日々。「よく恥ずかしくないね」と言われたことも
結婚したはいいけれど、子どもが生まれてからはお金には苦労しました。家族みんなで外食したいと思い、サイズアウトした子ども服を近所の公園で売ったりもしていました。子どもと2人でフリーマーケット(笑)。たまたま住んでいたのが裕福な方が多いエリアで、幼稚園の知り合いの方々には二度見されました。「よく恥ずかしくないね」と面と向かって言われたこともあります。かわいそうと思ったのか暖かいミルクティーを差し入れてくれた人もいました。私としては子供とお店やさんごっこして、本当にお金がもらえて楽しかったんですけどね。悲壮感なんてゼロでしたよ。
私は周りの目をあまり気にしないし、物質的な豊かさに、さほど価値を感じないタイプですが、マイホームがあったらな。と思うことはありますよ。理想の間取りで、水回りがピカピカで……。私達家族が永住するための土地と家だ。と思えたら、老後に向けて安心するんだろうなと想像したりはします。子育て中の収入は夫に頼っていたので、今後は私が役者としてもっとしっかり稼ごう!という思いも強くあります。
高齢の母とは、つかず離れずの距離で見守っています
−お母様は86歳だそうですね。どのように関わっていらっしゃるのでしょうか。
私の家から20、30分の場所でひとり 暮らしをしていて、必要なときだけヘルプするようなかたちです。毎朝「おはよう 。・」の挨拶をラインし合っています。足腰はずいぶん弱くなっていますが、買い物に行ったり、マッサージに通ったりと日常生活を送ることはできていて、週一くらいでサポートしてくださる方にきてもらうことを提案しても「まだ自分でできる、やりたいから」と拒否されます。いよいよ難しくなったら母の方から言ってくれるだろうし、今はこの距離感でいいのかなと思っています。「おかずを多めにつくったから」と顔を見に行ったりはもちろんしていますよ。幸いご近所の方々がとても親切で、感謝して私も頼らせて頂いています。もし介護が必要になったら、兄や夫と相談して母の希望する形でお世話できたらいいなと思っています。
みんなで企画やアイデアを出し合って、衣装も小道具もなんでもやる。「こねこフィルム」はまるで劇団
−赤間さんのお名前をさらに世の中に広めた「年齢確認」に代表される「こねこフィルム」のショートドラマ。こんな風にバズることは想定していたのでしょうか?
私は全然! 「バズる」という意味も価値も、当時の私は何も分かっていませんでした。バズった後もどうやら沢山の方が観てくれているようだ、と理解はしても実感がない。街で声をかけられるようになって初めて「ファンって本当にいるんだ」と嬉しく思いました。私は新しいもの好きなのかもしれません。あとは人から求められるとうれしくてやっちゃう。「SNS動画ってよく分からないけれど、赤間さんにやってほしいと監督が言ってくれるならどこにでも行く、何でもやる」みたいな感じで参加しました。
−これまで、成功している他の役者さんに対して嫉妬などはされなかったのでしょうか。
もちろんあります! 若い頃は「私以外の役者はみんなが敵!」と思うくらいやみくもに嫉妬していました。誰も私のことなんかライバルだと思っていないのにね(笑)。今も、一度は参加したいと思う監督の作品に出ている方全員が羨ましいです。同じ土俵に立てていないことがもどかしいし、悔しい。「どうしたらそこに行けるんだろう」って今でもそれはモヤモヤします。
でも年齢を重ねた今、選ばれるのにはやっぱりそれなりの理由があるんだと思えるようになりました。私がそこに踏み込んで行けていないのだとしたら、勉強し続けるしかない。役をいただいたときに全力で演じて、そこで認知されるしかないんですよね。やり続けるしかないなと。改めて、父に言われた「やると決めたなら、やり続けるのがいい」という言葉が胸に刺さりますね。
赤間麻里子さんのターニングポイント⑤
「役者同士の結婚。物質的な豊かさより、やりたいことを続ける道を選びました。今も、人から求められるのがうれしくて続けられています」
撮影/吉田勇生(TRON) ヘア&メイク/阿部美咲(Eulysses) 文/佐藤望美
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