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【ダウン症の書家・金澤翔子さん】彼女の魔法のような力はどこから来るのか?母の心が震えた、その正体とは?

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ゆうゆう編集部

世界各地で個展や公演を開催する、ダウン症の書家 金澤翔子さんが表現する書。翔子さんを世界の舞台で活躍する書家へと導いた、母であり書の師匠である、金澤泰子さんの文。母と子が奏でる、筆とペンの力をじっくりとお楽しみください。

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目には見えない力

翔子に降りくる「目には見えない大きな幸運の力」がどこから来るのか、不思議でならなかった。私はこの疑問の為に思考を深めなければならず、数学者や、哲学者についても学ぼうとした。

これらの摂理を極めようとする人は、やはりこの「目には見えない力・神の姿」が見たいのではないか。思想が高みにいくということは、神の御業を見ることなのだと思い始めた。

そして、この様な遥かに優れた人々が見つけ出す神の正体は、とりもなおさず〝愛〟なのだと解った。

アインシュタインが娘・リーゼルに宛てた手紙の中で、かの有名な『E=MC2』は「愛の方程式」なのだ、と言っていたことを知った。私は以前からこの数式が大好きだった。宇宙の真理を表す偉大なこの数式を、美しいとさえ感じていた。

今、私は優しいダウン症の翔子を授かって本当に幸せだと思う。翔子という娘を授かり、深淵な世界を覗きこむ様にもなった。

だが、翔子の愛の深さは私の想像を遥かに超える領域なので、この〝愛〟は私が教えたものではない。又、私の遺伝子から来るものでもない。しかも、それはただ優しいだけでなく、翔子のいる場所を、「平和で調和のとれた世界」に変えてしまうのだ。まるで平和の使者の様に。

いつでもどこでも、多くの人々が来場する舞台でも、翔子がいるとあたたかな喜びが広がる。魔法の様なこの力がどこから来るのか、長年の疑問であった。けれど最近、それは翔子の遺伝子・染色体に秘密があるのだと納得した。翔子は健常者より染色体が一個多い。その一個多い染色体の正体が「愛」なのだと思う。

物理や数学に弱い私が、それでも相対性理論や、光速の二乗云々に惹きつけられたのはなぜだったのか。この美しい数式が愛のことを言っているのだと分かったとき、私は心が震えた。

アインシュタインは「この世界を支配している絶対不変の法則で、いまだ正式な説明がなされていないエネルギーがある。それこそが〝愛〟である」と、百年前に言っている。

翔子に降臨する膨大な幸運のエネルギーは、翔子のあの膨大な愛の量とイコールだったのだ。得体のしれない不思議な幸運は、人を愛してやまず、人の幸せを希(こいねが)い、哀しいほど優しい翔子の、「愛の想い」が引き寄せているのだろう。

金澤泰子 ● かなざわ・やすこ
書家。明治大学卒業。書家の柳田泰雲・泰山に師事し、東京・大田区に「久が原書道教室」を開設。ダウン症の書家・金澤翔子を、世界を舞台に活躍する書家へと導いた母として、書の師匠として、メディア出演や本の執筆、講演会などで幅広く活躍。日本福祉大学客員教授。

金澤翔子 ● かなざわ・しょうこ
東京都出身。書家。5歳から母に師事し、書を始める。伊勢神宮など国内の名だたる寺社や有名美術館の他、世界各地でも個展や公演を開催。NHK大河ドラマ「平清盛」の題字や国連本部でのスピーチなど活動は多岐にわたる。文部科学省スペシャルサポート大使、紺綬褒章受章。昨年12月、大田区久が原に念願の喫茶店をオープンした。 今年は書家デビュー20周年の記念の年となる。

文/金澤泰子 書/金澤翔子

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※この記事は「ゆうゆう」2025年8月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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