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【光る君へ】天皇に献上する物語を書き始めた紫式部(吉高由里子)。ついに『源氏物語』が始動開始

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志賀佳織

そして第32回のタイトルは『誰がために書く』。一条天皇のために献上された物語であるが、書けば書くほど、まひろは、これこそ自分の書くべき物語だとの確信を得ていくのである。

寛弘2(1005)年春、一条天皇と亡き皇后・藤原定子(さだこ/高畑充希)の遺児、脩子(ながこ)内親王(井上明香里)の裳着(もぎ)の儀式が執り行われた。この儀式に、一条天皇は、まだ公卿に復帰していない藤原伊周(これちか/三浦翔平)を大納言の上座に座らせるなどして、道長を牽制した。しかし道長はそれを気に留めるふうもなく、逆に土御門殿で漢詩の会を開き、その場に伊周を招く。

後日、一条天皇は伊周を陣定(じんのさだめ)に参加させるよう道長に命じた。「難しいと存じます」と再三答える道長に、天皇は譲らない。仕方なく「諮(はか)ってみましょう」と答える道長。「お上、過日、差し上げた物語は、いかがでございましたか」と尋ねると「ああ、忘れておった」とそっけない答えが返ってくるばかりだった。

道長はまひろを訪ね「帝に献上したあれはお心にかなわなかった」と告げた。まひろは
「力及ばず申し訳ございません」と答えながらも落胆した様子は見せない。「帝にお読みいただくために書き始めたものにございますが、もはやそれはどうでもよくなりましたので、落胆はいたしませぬ。今は書きたいものを書こうと思っております。その心をかき立ててくださった道長様には深く感謝いたしております」

「それがお前がお前であるための道か」と問う道長に、きっぱりとした明るい笑顔で「さようでございます」と答えるまひろの顔はまぶしくさえあった。かつて、「私は私らしく、自分が生まれてきた意味を探してまいります」と告げたまひろの横顔が、道長の頭をかすめたのだろう。そう、まひろはもう後戻りできない自分の道をしっかりと歩き始めたのだった。

ある日、彰子が暮らす藤壺を道長が訪れていると、思いがけず一条天皇の「お渡り」があった。慌てて辞そうとする道長を呼び止めて、天皇はこう告げる。「読んだぞ、あれは朕への当てつけか」

作者を問われ、藤原為時(ためとき/岸谷五朗)の娘だと答えると、一条天皇は意外にも「唐の故事や仏の教え、わが国の歴史をさりげなく取り入れているところなぞ、書き手の博学ぶりは無双と思えた。その女にまた会ってみたいものだ」。そして会うなら「続きを読んでからにしたい」と言う。

道長はすぐにまひろを訪ね、彰子の女房になって藤壺で続きを書くように提案する。娘・賢子(かたこ/福元愛悠)のことを考えると後ろ髪を引かれるまひろだったが、暮らしの先行きも考え、賢子を父に預けて藤壺に出仕することを決める。

その頃、安倍晴明(はるあきら/ユースケ・サンタマリア)が危篤に陥る。最後に顔を合わせた道長に、晴明は最後の言葉を残す。「ようやく光を手に入れられましたな。これで中宮様も盤石でございます。いずれあなた様の家からは、帝も皇后も関白も出られましょう。ただし、光が強ければ闇もまた濃くなります。そのことをお忘れなく」。まひろが、そしてまひろとのつながりが「光」を生み出していくことが予想されるくだりだ。

ある月食の夜、内裏で火事が起きる。逃げ惑っている彰子の手を取り、一条天皇は避難する。後日、伊周は天皇に、これは放火だ、自分のことをよく思わぬ何者かがいる。天皇が信じるべきは自分だと吹き込む。今後、こちらの関係もどうなっていくのか、しっかり、天皇! と思わず物申したくなってくる展開だ。

大河ドラマ「光る君へ」第32回より ©️NHK

やがてまひろが藤壺に出仕する日が来た。大勢の着飾った女房たちが、まひろを冷たい目で見やりながら品定めをしている様が見て取れた。いよいよまひろの宮中での生活が始まるのだった。宮中にいて、宮中の人間関係を見ながら、人の光と影をどう描いていくのか。ドラマもクライマックスに差し掛かってきて楽しみだ。

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