元宝塚雪組トップ娘役・愛原実花さん。出産後「子育てでいっぱいいっぱい」だった1年を経て舞台復帰する『アニー』への思いとは?【愛原実花さんのターニングポイント#1】
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更新日
恩田貴子
元宝塚歌劇団雪組トップ娘役で、劇作家の故・つかこうへいさんを父に持つ愛原実花さん。出産後、初舞台となるミュージカル『アニー』にかける思いなど、じっくりとお話を伺いました。
お話を伺ったのは
愛原実花さん 女優
あいはら・みか●1985年生まれ、東京都出身。
2002年、宝塚音楽学校に入学。04年、宝塚歌劇団入団。09年、雪組トップ娘役に就任。
10年9月『ロジェ/ロック・オン!』公演で退団。その後は俳優として、数多くの舞台に出演。
主な出演作に、『熱海殺人事件』『ラ・カージュ・オ・フォール』『るろうに剣心』『スクルージ~クリスマス・キャロル~』『夜曲~ノクターン~』など。
父は劇作家の故・つかこうへいさん。
あこがれの作品『アニー』へのオファーで、舞台復帰を決意
あご下のラインに切り揃えた軽やかなヘアスタイルで、インタビューの場に現れた愛原実花さん。ロングヘアのイメージが強い愛原さんだが、聞けば、昨年第一子を出産後、「自分にかまっている時間がなくて(笑)」、長かった髪を切ったのだと言う。そう話している間にも、スタッフの間でささやかれていた「かわいい!」の声が愛原さんの耳にも届いたのだろう。はにかんだような笑みと、「うれしい!」の声が返ってきた。
「かわいいなんて言っていただけて、すごくうれしいです。この1年、ずっと家に子どもといて、家族以外の人にほめていただけるのは新鮮(笑)」
2010年に宝塚歌劇団を卒業した愛原さんは、翌年に女優活動を開始して以来、休む間もなく舞台に出続けてきた。そんな愛原さんが昨年は出産のため、舞台への出演を一時休止。子どもと向き合う日々を過ごしてきたと言う。そしてこのたび、舞台復帰作として選んだのが、国民的ミュージカル『アニー』。日本テレビ主催での初上演から40年目を迎える本作に、愛原さんは子どものころから親しんでいたのだそう。
「毎年のように(当時上演されていた)青山劇場に通い、自分の部屋のベッドの上でアニーごっこをしていたくらい、『アニー』は大好きな作品です。子どものころの私は、始めは最初は劇中で歌われる『トゥモロー』などの楽曲に惹かれ、次第にアニーの明るさや強さ、素敵なセリフに魅了されて。観劇後、『自分の心持ちひとつで明日は変えることができるんだ!』と思ったことを今でも鮮明に覚えています。
実は、出産後は子育てのことで頭がいっぱいで、舞台への具体的な復帰時期は考えていなかったんです。でも今回お声を掛けていただき、子どものころからあこがれていた『アニー』に出演できるならと、すぐに復帰を決めました」
宝塚歌劇団での学びを舞台で生かしたい
愛原さんの出演が公に発表されると、かつて『アニー』に出演していた宝塚歌劇団の同輩から連絡があったと言う。
「みんな口を揃えて、『「アニー」は観てくださる方も、出演する自分もハッピーになれる、めちゃくちゃ素晴らしい作品。そんな作品にみな子(愛原さんの本名)が出るのがすごくうれしい! 楽しんで!』と言ってくれて。これまでいろいろな舞台に出演させていただきましたが、こんなふうに言ってもらえて本当に嬉しくなりました。あのころの私のように客席から観ている側だけでなく、出演する側もこの作品の持つパワーに魅了されているんだなと感じました」
今回、愛原さんが演じるのは、アニーの運命を大きく変える大富豪・ウォーバックスの秘書、グレース。凛としたたたずまいで仕事をバリバリこなす一方、あたたかな心を持つ人物だ。近年では、宝塚歌劇団の先輩・白羽(しらはね)ゆりさんや、宝塚音楽学校の同期・蒼乃夕妃(あおのゆき)さんも同役を演じている。
「出演が決まり、白羽さんと蒼乃に連絡をしたところ、2人からも『とにかく楽しんで!』と(笑)。グレースは秘書としてウォーバックスをサポートする役回り。『娘役』として男役さんに寄り添う姿勢など、宝塚時代に学んだことをこの舞台で生かせたらと思っています。
また、『アニー』の舞台は世界大恐慌直後のニューヨーク。経済不況によって、多くの人々が職や家を失い、社会全体が困窮していた時代です。そんな時代に一人で働き、生きていたグレースにはきっとたくさんの苦労があったと思うんです。厳しい環境のなかで生きていくために、もしかしたら心に鎧をつけていたかもしれません。そんな彼女が、アニーとの関わりを通じてどんどん心がほどけ、人間的にも成長していく。そういったグレースの心情を、丁寧に表現できたらと思っています」
そんなグレースと自身に重なる部分はあるのだろうか。たずねてみると、ブンブンと大きく首を振る愛原さん。
「私はグレースと違って、もう抜け抜けです! 声が低いせいで落ち着いて見えるのか、なぜか昔から責任者的な役割を任されがちなのですが、フタを開ければもうポンコツもポンコツ(笑)。なのに、頼まれると『はい、やります!』なんて引き受けてしまうので、宝塚の同期や先輩からは、『もう! みな子は……』って、いつも呆れられていた気がします。
雪組のトップ娘役にならせていただいたときも、私はそんな立場になれるなんて全然考えてもいなくて。雪組のみんなに『大丈夫⁉ 大丈夫⁉』と支えてもらいながら、なんとか目の前のことに取り組んでいました」
インタビュー時は、稽古の真っ最中。グレースとして『アニー』という作品に向き合うなかで、“家族”に思いをはせたという愛原さん。次回は父親である劇作家の故・つかこうへいさんと過ごした日々のこと、そして、愛原さんが「もうひとつの家族」と呼ぶ宝塚歌劇団への思いをお届けする。
愛原実花さんのターニングポイント①
「子育てでいっぱいいっぱいなとき、あこがれていた『アニー』への出演オファーをいただき、すぐに舞台復帰を決めました」
撮影/園田昭彦
【INFORMATION】丸美屋食品ミュージカル『アニー』
舞台は1933年、世界大恐慌直後のニューヨーク。誰もが希望を失うなか、孤児院で暮らすアニーだけは元気いっぱい。生き別れた両親にいつか会えると信じている。そんなアニーは、クリスマス休暇の間、大富豪・ウォーバックスの自宅で休暇を過ごすことに。彼女の前向きな姿に心を動かされたウォーバックスは、アニーの両親探しを手助けする。懸賞金目当てに群がる偽の親たちや悪だくみをする者も現れるなか、アニーは本当の家族に出会えるのか……⁉
演出:山田和也
出演:丸山果里菜、小野希子(Wキャスト)、藤本隆宏、愛原実花、赤名竜乃介、浜崎香帆、須藤理彩 ほか
東京公演:4月19日(土)~5月7日(水) 新国立劇場 中劇場
※東京公演の他、上田、大阪、金沢、名古屋公演予定
東京公演問い合わせ:キョードー東京 ☎︎0570-550-799
オペレーター受付時間(平日11:00~18:00 / 土日祝10:00~18:00)
公式ホームページ:https://www.ntv.co.jp/annie/
東京公演主催/製作:日本テレビ放送網
協賛:丸美屋食品工業
Annie2025©NTV
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